タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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これのクロコダイル視点
2021/06/15
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どこを気に入ったのかなんてわからない。それでも、ただひとりの人間を手に入れるのに国ひとつ乗っ取ろうとするのと同じ程度の労力をかけても良いと考えるくらいには気に入っていて、怖がられないよう、逃げられないように甘言ばかりを紡いだ。欲しいものがあればすぐに贈りつけたし、お前が好きなものに触れてみてこの先一切必要としないだろう無駄な知識もつけて会話を膨らませた。物欲が少ないのか、未だ信用されていないのか、欲しいものはどんどん口にしなくなっていったが、そんなもの、おれ自身が聞かなくたってどうとだってできる。
邪魔者は排除し、ただただ呑気な幸せとやらを守ってやっていたはずなのに、目の前の女は今日はどこか浮かない表情で佇んでいて視線すら合わない。ぴくりと引き攣りそうになる表情筋を抑え、この女の平穏を崩した何某かをどう痛めつけようかと考える殺気も抑え、どうしたのかと探りを入れようとした。瞬間、つぅ、と流れた水分に何も抑えられなくなる。この女以外の生きとし生けるもの全てを消し去ってしまいそうな感覚に陥り感触と砂が舞う。
「おい、誰に泣かされた」
無意識だった。触れてしまえば壊してしまうと思って一度も触れたことのない肌に指が滑っていて、天敵である水分が皮膚に滲む。手籠にする為に優しく、甘くしていたのが全て水に流され、舌打ちをしそうになる。驚きすぎて目を見開いている女に、今のは幻聴だと嘯けば取り戻せるだろうか。なんて甘いことばかりしていたせいか甘い考えになる。無理だ。ああ、もうあの屈託のない笑顔は二度と見られないのか。それでも、最後の仕事はさせろ。誰に、泣かされたんだ。
「クロコダイルさん」
「あ?」
今更取り繕えないのは分かっていても、こんな声音を出すつもりはなかった。怯えさせてしまう、と思っても一度タガが外れた感情はもう抑えが効かなくて眉間に皺が寄る。
「ほんとのクロコダイルさん?」
涙に濡れた声はどこか痺れたようにしたったらずで、激情に駆られそうになる。女が泣いていること自体は許されざることだが、それでも泣いているおかげで指先が濡れて力のセーブができていることに感謝する。濡れた指先に、柔らかな手が重なって固まった。
「だまされてても、クロコダイルさんが、すき」
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