タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
← →
これの続き
2021/06/24
▼
「だまされてても、クロコダイルさんが、すき」
固まったおれに放たれた言葉は、おれにとって都合の良すぎる言葉で、あ?と間抜けな声がこぼれる。すき、すき、と涙をこぼしながら言い募る姿を見下ろして戸惑う。どんなバカなやつでもさっきのおれの態度を見れば、今までのあれこれが全部嘘だと、騙されていると気付いて罵られるなり怒られるなりするはずなのに、縋るはずの立場のおれが縋られるように手を重ねられていて訳がわからなくなる。
「悪い海賊でも、利用されててもいいから、だから、だから、」
固まったままのおれの手を握ったまま頬に擦り寄せられ、涙に濡れていてよかったと心底思った。そうじゃないと力が暴走して何をしでかすかわかったもんじゃなくて、息を吐く。都合の良い幻覚だったとしても、一度瞬きをすればベッドの上で目が覚める夢だったとしても、好いた女が堕ちてきたのに抱き寄せもできず固まったままだなんてまるで童貞のようで自分を殺したくなる。
都合の良い幻覚なら、夢なら、おれがおれのまま話してもこの女は離れてはいかないんだろうか。
「何人の人間を殺したかも覚えてねェ、国を乗っ取ろうとした海賊でも、その言葉を吐けるのか。今ならまだ、逃がしてやれる」
嘘だ。逃がしてなんかやるものか。怯えられ、泣かれ、罵られようが、悪い海賊なんだから欲しいものは奪うに決まってる。ただ、二度と屈託のない笑顔を見ることや、無意味な会話をする日常がおれから逃げていくだけ。びくり、と肩を揺らして瞳に怯えがチラつく。都合の良い幻覚や、夢ではなかった。わかっていたさ、と鼻で笑う。所詮おれは望んだものを何も手にすることなんてできない惨めで憐れな男で。
「こわくないって言ったら嘘だけど、でも、本当のクロコダイルさんのことをもっと、知りたい。悪い海賊ならちゃんと逃がさないで、捕まえていて」
震えた声で呟かれた言葉に目を瞠った。
← →