タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2025/06/08 ロー
離れないで、離さないで・絶対に離さない、離せない・一緒でいい、一緒がいい
これの続き
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「……最近大人しいな」
「? 私? うるさかったかな? ごめんね」
宴に巻き込まれながらもどうにかキッチンに隠れて嵐が過ぎ去るのを一人静かに待っていた。飲み物の補給に来たらしい女が目当てのものを手にしてまた足早に出て行こうとするから思わず声を掛けた。心当たりが全くなさそうにしながらもお人好しすぎてすぐに謝る姿勢を見せておれに向き直るから目が泳ぐ。自制していたつもりだが酒に酔っていたのか唐突すぎたせいで言葉が正しく紡げていなかった気がする。謝らせたかったわけじゃない。そもそもそういう意味じゃなかった。
「……違う、……そうじゃなくて、……最近喋りかけてこないな、と」
「あ〜……それはそうかも」
そんなことないよ、と否定されるとばかり思っていた耳に気まずそうな肯定が滑り込んできて固まる。この船は海賊のくせに愛想のいい奴らばかりで、他の船の無口な男と話す数が他より少ないのは至極当然なわけで、おれ相手との会話が少なくなるのは自然で、だから近頃の会話の少なさもそれが原因だと思っていたのに。おれとの会話が減ったことは意図的だと言わんばかりの気まずい肯定が返ってきた。
「今こうやって大好きな人たちのそばにいられるのって、実はすごいことなんだなって今更気付いたの。だからナミちゃんとロビンちゃんとの時間、大事にしたくて、」
いくら時間があっても足りなくて、と照れたように笑いながら言われた言葉に背中に滲んでいた冷や汗が乾く。仲間との時間を大事にすることを改めて言葉にする気恥ずかしさに目を泳がせて肯定しただけで、決しておれを遠ざけたことを指摘されたせいで気まずい肯定をしたわけじゃなかった。
「そうだな、……一緒にいられる時間は大事にするべきだ」
照れくさそうにはにかむ姿におれの口端もほんの少し上がって、慌てて引き締める。
「ローも一人でいないで甲板でみんなと話そうよ」
「……馬鹿騒ぎは得意じゃない。この船で話が通じるのはお前くらいだ」
そんなことないと思うけどなあ、とのんびり笑う姿に呆れる。まあお前も麦わらの一味らしく突飛なことをしでかすことはあるが、一応は常識人側だ。だから最近話していないことに疑問が浮かんで引き止めた。女同士の仲を邪魔されているのに、おれを邪険にせず一緒に甲板に出ようよと誘うお人好しさに空気が漏れる。
「……あいつらとの時間を大事にしたいんだろ、引き止めて悪かったな」
「だからローも一緒に来てくれたらもっと嬉しいのに。……でも無理強いはしたくないから、気が向いたら来てね。私、ローとお喋りするのも大好きだから」
気が向いたらでいいからね、ともう一度紡いで今度こそ甲板へ出ていった後ろ姿を目を丸くして見つめる。扉が閉まって背中が見えなくなってもその先の背中をじっと固まって見つめて、それから無意識に止めていたらしい呼吸を再開した。大好きだから、と言われた。そりゃ、嫌われていない自覚はあった。こんなにも懐いてくるのに嫌われていたらそれこそ驚く。だが、こんなにも真正面から好意を伝えられるのは海賊になってから始めてで戸惑う。家族やコラさん、クルーたちに言われた時と同じ気持ちで受け止めることができない。それは、言った側の問題じゃなくて言われた側の問題だということにすぐさま気付く。あんなに軽く、当然のことのように言われたんだ。言った側に深い気持ちなんてない。言われた側がそれを深い意味で捉えようとしてしまったから、うまく受け止めることができなかった。それでも、深い意味なんてなくても、嘘じゃない。そんな変な嘘はつかない女だ。だから、おれにだってチャンスはあるはずだ。立ち上がって、背中を追いかけた。おれだって、お前の時間が欲しい。あいつらは同じ船に乗る仲間じゃねェか。どうしたっておれより一緒にいられる時間は長いんだから、少しくらい譲ってくれたって良いだろう。
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