タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/04/07
これの続き


「ねえ、お願いってば」
「ダメに決まってんだろ」
 ウワッサンジくんやっぱり出てきた。頭を抱えてしまいそうになるけど、これで出てこないサンジくんはサンジくんだから苦笑するだけに収まった。

「お前がいくら頑張ろうとこの天使のような女神に釣り合う男になんざとてもなれねェよ。なぜならこの女神はお前が成長するのと同じスピードで日に日に更に美しく可憐に成長するんだからな」
「お姉さんが毎日かわいくなるより早くおれがかっこよくなるから大丈夫だ!」

 これには男の子もドン引きしてくれるだろうと思ったのになぜか同じ次元で会話を噛み合わせ始めたふたりに今度こそ頭を抱えてしまった。どうしてちょっと話が通じ合ってるの。やるじゃねェか坊主、みたいな顔しないでサンジくん。さっきの子どもにも容赦ないチンピラ表情はどこに行ってしまったの。

「その気概だけは認めてやるよ。でもお前がいくら頑張ろうとおれが阻止するから潔く諦めるんだな」
「お姉さんの彼氏でもないくせに」
「ヴッ」

 あっ、死んだ。ぐしゃりと地面に崩れ落ちたサンジくんに今度こそドン引きした表情を見せた男の子に思わず笑う。

「お前それ言っていい事実と言っちゃいけねェ事実があるんだぞお前ほんとガキじゃなかったら蹴り飛ばしてたからなクソが」

 ぶつぶつと崩れ落ちたまま呟く言葉があまりにもどろどろと負のオーラが滲み出ていて思わず可哀想になってそばにしゃがみ込んで背中を撫でる。瞬間あたり一面にお花が咲いたから笑ってしまう。顔が見えなくてもお花が咲いてるのがわかるのにいつまで経っても起き上がらないのは撫でられ続けたいからなのか、ただ背中を撫でただけで鼻血まみれになってしまった顔を見せられないからなのかどっちだろうと考えながら急に崩れ落ちた大人にドン引きしている男の子に視線を向ける。

「あのね、私は強いとか賢いとかはどうでもいいの」

 そのまま話続けるの?と言わんばかりの目はやめてほしい。さっきサンジくんと意味のわからない話通じ合ってたじゃん。それでも、じゃあ好き嫌いもなくすから、と子どもらしいアピールポイントを増やした男の子に頬が緩む。

「好きな人のことすぐ答えられなかったのは大したことない男だからじゃなくって、……好きな人が耳聡いから、聞かれてるって思ったら心の準備ができなくて言えなかっただけなんだよ」

 女の人の涙の音すら聞き取ってしまう人だから。案の定男の子の告白を受けている私を見つけてすぐさま乱入してきたくらいだし。じわ、と男の子の目に涙が浮かぶ。ああ、結局ただ告白を引き伸ばしただけで傷付けて泣かせてしまった。痛む胸を押さえながら、ごめんね、と謝る。

「それでも、……それでもおれは強くて賢くなってお姉さんを見つけて、お姉さんの、す、きな人より良い男になって、また好きだって言いに行くから!」

 涙ににじんでもまっすぐな意志の強い目と勢いは変わらないどころか強さを増して、その力強さに思わず顎を引いてしまう。満足そうに唇を引き締めて、待ってろよ、と叫んで走り去った男の子に呆気に取られた私の手が何かに触れて意識を取り戻す。はっとしてその手に視線を移せばいつのまにか地面に這いつくばっていたサンジくんは起き上がって私の正面に座っていて、ぎゅっと私の手を握りしめていた。サンジくんの顔を見上げれば、さっきので鼻血は出ていなかったようで安心したけどぼとぼとと涙をこぼしていてギョッとする。

「エッどうしたのなんで泣いてるの?!」

 さっきまで私が背中を撫でただけであんなに花を散らしていたのに。慌ててサンジくんの頬に手を添えようとしてもぎゅっと強く掴まれた手に身動きできずに驚く。

「れ、レディ、好きな野郎、いんのぉ……? どこのクソ野郎がレディのことたぶらかしたの……、聞かれるってことは近くにいんの、ねえ、レディ、そいつ、誰、おれが蹴り飛ば、いや、レディにちゃんと見合う男かどうか処理、見定めてくるから教えて」

 ひぐひぐと泣きながら言われた言葉にぽかんとしてしまう。というか蹴り飛ばすだの処理だの言葉の節々で漏れ聞こえた気がするんだけど。思わず笑ってしまった私に、笑ってるレディかわいいけど今はおれの話真面目に聞いてェと更にべしょべしょに泣き出すからサンジくんの要望を聞けずに笑いが止まらなくなってしまう。だってサンジくんのことなのに。サンジくんだよって言ったらサンジくんはサンジくんのことどうやって蹴り飛ばして処理するつもりなんだろう。なんだか楽しくなってしまって地面に座り込んだままくすくす笑い続ける私とぼろぼろ涙をこぼし続けるサンジくんの姿はたぶんものすごく注目を浴びているから、そろそろ騒ぎを聞きつけたナミちゃんたちに回収されてしまいそう。