「寝てます?」
「寝てます」
絶対嘘だと思いながらも顔を合わせるたびに聞くのが日課になってしまった。降谷さんは私の予定を聞き、私は降谷さんの睡眠時間を聞く。いくらスケジュール報告とはいえ相変わらず嘘をつかなすぎて女性がそんな開けっ広げにプライバシーを話すなと理不尽に怒られ、降谷さんは息をするように睡眠時間を誤魔化しておこ、おこ……怒れたらいいのになあ、と遠い目になる。怒るだなんておこがましいことできやしない。だって降谷さんは別に遊んで夜更かししてる訳じゃない。正義のために頑張って夜も眠らず国を守ってくれているのだから。
正義を貫く降谷さんを好きになったけど、ここも現実だと受け入れてしまえばまた見方も変わってしまって手放しでかっこいいと言えなくなってしまった。物語を読んでいるときは一コマで場所を移動したり機密情報を一ページで手に入れたりしていたけど、現実だとそうはいかない。時間は有限で、移動時間はもちろん必要だし、描かれることのない睡眠や食事の時間だって必要で、物語のように降谷さんの日常をこなすには現実の時間が足らなすぎる。
「ちゃんと寝てますよ、本当に」
「……私に付き合って一緒に歩いて通勤しなくてもいいんですよ。車で行った方が、時間短縮もできるし」
「睡眠時間も大事だとわかってますけど、友達との時間も大事なんです。この数分の時間を取り上げられると寂しくて仕事に支障が出ます」
仕事に支障が出る、だなんて脅し文句を使われたことにぐうの音も出なくなる。心配なことには変わりはないけど、寂しいと言われて少し気持ちが暖かくなる私はなんて扱いやすいんだろうと自分でも思う。ちょろい。降谷さん相手だけだからいいかと思うけど、でもその降谷さんを寝かしつけたいのに丸め込まれていては意味がない。まあ降谷さんに勝てるはずもないのは最初からわかってた。わかってたけど。
でも根気よく言えば少しは寝てくれるかなと期待して顔を合わせるたびについ小言を言ってしまう。しつこいと嫌われないか少しだけ心配になるけどつい口が動いてしまう。
「……でも睡眠時間が少なすぎると寿命が短くなっちゃいますよ。百歳超えても私とお話ししてくれないと、それこそ寂しいです」
「……あなたの人生設計長いですね」
私の人生設計というより、降谷さんの人生設計です。降谷さんに百歳超えても笑って楽しく生きててほしいから、それを見守るために私も長生きする必要があるだけで。
「百歳になる長いお付き合いになっても僕に飽きたりしません?」
「えっ飽きるわけないですよ。もし私が安室さんのこと怒らせて喧嘩別れとかしちゃっても遠くから見守るのくらいは許していただけると……」
言葉にしてから警察官にストーカー宣言をしてしまったことに気付いたけどでも許可を取れるなら今のうちにもらっておこうと撤回はしない。呆れたように笑う降谷さんは私がストーカー宣言をしたことに気付いてしまっただろうか。
「友達なら喧嘩しても仲直りするでしょう。あと僕が嫌われて喧嘩別れする可能性はないんですか」
「ないです」
「相変わらずですね。まあもしそんなことがあったとしても地の果てまで追いかけて仲直りしますけど」
私が降谷さんから離れることはないと思うんだけど、ないと思うけど少しだけ鳥肌が立ってしまった。仲直りかっこ物理な感じがした。いや私が降谷さんから離れるなんてことは絶対に起きないんですけど。
なんて考えていて気付く。ストーカーの許可をもらいたかったのにさらりと受け流されてしまった。くそう。言質をとろうと思ったのに。降谷さんなら口約束でも一度言ったことは守ってくれると思ったから今のうちに許可をとりたかった……。
────────
「あの、」
「え?」
ポアロで食事、というか休憩するのにもようやく慣れた頃、唐突に声をかけられて間抜けな声を出してしまう。顔をあげれば緊張からかこわばった顔をした私と同い年くらいの人が立っていて首を傾げる。私店員さんじゃないですけど。いや座ってるからわかってますよねさすがに。
「急に声をかけてすみません、安室さんとは、その、どういったご関係で……あの、たまに朝一緒に通勤してます、よね」
ものすごく緊張しているのが伝わるほど声が震えていて察する。安室さんに恋をしているのだろうか。今時同性愛だなんて珍しくもなんともない。だけど悲しいことにまだ風当たりが強いのも理解してるし、それでも勇気を出したこの男性に心を打たれた。
それに、私にはとても言いたかった台詞があった。だから次に出るだろう言葉を待って少しわくわくしてしまう。
「お付き合いを、されているんでしょうか」
「安室さんとはお友達です!」
噛まずに堂々と胸を張って、と肩の力と気合がものすごく入ってしまったせいでわりと店内に響いて少し恥ずかしくなる。でもちょうどよかった。目の前にいる彼だけでなく、安室さん目当てに来ている人全てに私は伝えたかった。いや、なんなら全人類に伝えたい。私は降谷さんとお友達なのだと。降谷さん公認のお友達です。ふふん。
────────
彼女が男性に絡まれているのはすぐに気がついた。隣に引っ越しをしてもらってからほぼ毎日一緒に通勤をしていれば、絡まれるのも時間の問題だと分かっていた。でも彼女に絡むならいつも同じ席に座って俺に絡むあの女性だと思い込んでいて、注意を全てそちらに向けていたから対応に遅れた。まさか女性が行動するよりも男性の行動の方が早いだなんて思いもしなかった。あの表情や問いかけからして、きっと彼女に恋い焦がれている。
「お付き合いを、されているんでしょうか」
「安室さんとはお友達です!」
彼女の返答に店内が一瞬だけ静まり返る。ドヤ!なんて効果音が背景に散らばっているのが見えるほど堂々とした発言だった。
嬉しいはずなのに、喜ぶべき言葉なのに、望んでいた関係性なのに、じくじくと胸が痛む。
俺の心臓が痛むのとは打って変わって男の表情は少しずつ緩んでいくのが無性に気に食わない。
「でも、毎朝、」
「お隣さんに住んでるんです」
「……えっと、お付き合いはされてない、んですよね?」
「お友達です」
「……じゃああの、ぐだぐだと、情けなくてすみません、でもあの、いてもたってもいられなくなって、……あなたのことが好きだから、どうか、僕にチャンスをくれませんか」
ぴたりと時間が止まった。俺だけじゃなく、店の中のすべての時間が。一番最初に時が戻ったのは女子高生グループからでひそひそと、だけど興奮気味にやばいやばいと囁き合っている。年配のお客様は微笑ましそうに二人を見守っていて、俺は何も気にならないぞとどっしりかまえて新聞を読んでいたサラリーマンもちらちらと視線を動かしていた。
固まる彼女を横目にそんな様子に気付いたのかサッと赤くなったり青くなったりしている姿を見るに男は後先を考えられない性格なんだろう、だけど同時に猪突猛進なだけで裏表もないことがわかる。顔だって、女子高生グループがきゃいきゃい言っているのだから女性受けも悪くはないのだと思う。身につけている服や時計や靴を見ても、変に高くなく、変に安くなく年相応のまともな身なりで、悪口を言う隙がない。
「……人目のあるところですみません、だけど、あなたの味方の多いところで言わないと知らない男に声をかけられるのはきっと怖いだろうと思って、」
「あ、あの、どこかでお会いしたこと……」
「小さな女の子を守っている姿を見たことがあるんです」
銀行の時だ。今思い出しても間に合わなければどうなったか考えるだけで寒気がする。
「一方的な片想いです。僕なんか震えて何もできなかった、……あっという間に全てが終わっていて、情けないです。なのに僕と同じように震えて、泣きそうなのにそれでも立ち向かうあなたを好きになりました。どうか僕にチャ」
ガシャン!とけたたましいお盆の落ちる音が真下から聞こえてハッとする。慌ててすみませんと拾いあげて休憩室へと逃げた。彼女の返事を聞きたくなかった。あんなに大きな音を立てても安室の方に視線を少しもよこさなかった、彼女の返事を。どんなに挙動不審でも、どんなに口から奇声をあげても俺の顔を見るのが好きな彼女が、店内すべての人間が俺を見るほど空気の読めないけたたましい音を立てたのに、見なかった。
落としたのはわざとじゃない、はず。無意識にこちらに視線をよこしてほしくて落としたんだろうか。そんなことはどうでもいい。大事なのは、彼女が俺を気にも止めなかった事実だけ。
俺が警戒すべきは彼女を手の届かないところに連れ去る神さまのような何かだけだと思っていたのに。
人間相手なら彼女の一番は降谷だけだと思っていたのに。少しの迷いもなく、俺の手をとってそばにいてくれると思っていたのに。
あんなにも簡単に彼女の視線を奪われてしまった。
──────────
「あの、」
あまりにも私が黙り込んでしまっていたのか、気付いた時には真っ赤な顔から真っ青な顔に変わっていて申し訳なくなる。すみません。あまりの衝撃に。
最近はお友達ができてうかれる幼稚園児のようなメンタルをしていたから恋愛感情だなんてレベルの高い感情にまだ精神年齢が追いついていなくて固まってしまっていた。恋愛を知らないわけではない。そこまで鈍くない。ただ最近は友達になるならないだの友達と離れたくないだのそういったことに振り回されてばかりで他のことを考える余裕なんてなかったし、芸術のように美しい降谷さんとお友達になれて降谷さん目当ての人にどう、私はお友達なんですと言うか考えていらばかりで、私がその感情を向けられる当事者になるとは思っていなかったから。
「え、と」
また思考の闇に落ちてしまっていてどんどん目の前の人の顔色を悪くさせてしまっていて申し訳なくなる。申し訳ない、のにあまりの衝撃に言葉が口から出てこない。この世界で告白されたことが衝撃で。だって、あちらこちらに眩い顔面偏差値の方がいらっしゃって、このポアロに来たことがあるのならもちろん梓さんを見たことがあるはずで、眩いばかりの外見だけじゃなくて内面だって眩くて、非の打ちどころのない人がたくさんいる中で私に告白してくれた意味が分からなくて。
哀ちゃんを守っている姿を見て、と言ってくれたのは聞こえたけど、あれだって結局なんの策もなく飛び出しただけで勇気と言えるものじゃなく無謀なもので、結局降谷さんに助けてもらっただけで。褒められたものではなかった。
だけど、きっと、目の前の人は良い人だ。
私が怖がるかもしれないからと、降谷さんもいるこの人気の多い場所で正々堂々と告白をしてくれて、そういうことを考えられる人はきっと悪い人じゃない。恋愛のもつれがあったとしてもこの世界で私がこわいと思っている命の危機にあうようなこともきっとなさそうで、だけど。固まっていた唇をどうにか動かす。
「あの、ご、ごめんなさい。きっと、きっとあなたは良い人なんだと思います。でも、ごめんなさい、今は友達と話したりするのがとても楽しくて、それだけで私の容量はいっぱいで、今が抱え切れないくらい幸せで、だから、あの、ごめんなさい」
「……はい」
真っ直ぐな感情の返事はつっかえつっかえになってしまったけど、それ以外何も言わず受け入れてくれたこの人はやっぱりとても良い人なんだと思う。もしかしたら後悔をする日が来るかもしれない。それでも今は、降谷さんと話をするのが楽しくて、哀ちゃんにお姉ちゃんと言われるのが嬉しくて、安室さんがみんなに囲まれて幸せそうにしている日常をただ見ているので忙しくて胸がいっぱいで、そういうことを考えられなかった。
「じゃあもし、……もし、少しでもあなたの容量が広がったら、僕のことを思い出してくれると嬉しいです。あの、突然こんな注目を浴びさせてすみませんでした。真面目に聞いてくれて、答えてくれてありがとう」
思い出してくれると嬉しい、の言葉と共に名刺を渡されてつい受け取ってしまう。私に一度頭を下げて、店内のみんなにも頭を下げて男の人は出ていったのを私も頭を下げて見送る。真っ直ぐな思いにこたえるのがこんなにも精神的にくるものだとは思わなかった。誠意には誠意で返したくて、だけどあの返事でよかったのかわからなくて、男の人が見えなくなっても受け取った名刺に視線を落としてぐるぐると考え込んでしまう。
ひそひそと女子高生たちの話し声が聞こえてきて顔が熱くなる。まさかこんな青春真っ只中みたいな渦中に自分がなるとは思わなかった。冷えてしまった飲み物で喉を潤してハッとする。あれっ。降谷さんがいない。
どこに、と視線を動かせばまだちらちらと視線を浴びていてまた恥ずかしくなる。それが微笑ましいものを見つめる視線だからまた居た堪れない。
降谷さんは忙しいからこんな私を横目に急なお仕事でも入ってしまってそっと抜け出したんだろうか。
「ぴっ」
残った飲み物も全て飲みきったしこの生暖かい空気にずっと触れているのも気恥ずかしすぎると席を立って会計に向かおうと振り返った瞬間久方ぶりの奇声を発してしまった。びっくりした。降谷さんだ。てっきり急なお仕事でいないと思い込んでいたんですけど、普通に休憩だったんですか。びっくりした。目の前でにこりと微笑まれてうめきそうになる。裏で休憩していたからか、なんだか一段と輝いていますね。やっぱり休息は大事だと再確認する。
「おかえりですか?」
「あっ、は、はい。あの、お騒がせしまして……」
「僕もちょうど帰るところなので一緒に帰りましょう」
急用ができたんだろうか、言葉を遮られてしまって不思議に思う。私を使って早く外に出たいならもたもたしている場合じゃない。はいと頷いてまだなんだか生暖かい視線を向けてくる梓さんに会計をしてもらう。
からんころんと鈴を鳴らして外に出たのはいいものの、降谷さんの足取りが重たい気がして首を傾げる。
「あの……ひえまぶし」
不思議に思って声をかければ大人気俳優も霞んでしまうだろうレベルの満面の笑みを浮かべられて思わず目を細めてしまう。太陽を直に見つめてしまったかと思った。でも太陽のように目に悪いわけじゃないのでいくら眩しくても意地でも視線を落としませんよ。こんな満面の笑みはじめてなんじゃないだろうか。まぶしい。国宝。
「……僕の顔、好きですよね」
好きとかいうレベルじゃないと思うしもっと誇っていいと思います。というのが言葉にできなくてこくこくと頷くだけ。笑顔がさらに眩しくなっていく降谷さんに顔面で人が死ぬかどうか実験でもしてるんですかという気持ちになる。降谷さんがそんなことしないのはわかってるし、私が勝手に眩しがってるだけなんですけども。
「……あなたの好きはやっぱり信用できません」
「えっ」
「一番というくせに嘘ばっかりだ」
ぼそりと、だけどしっかり私に聞こえるように呟かれた言葉にクエスチョンマークが頭の中を駆け巡る。あっ松田さんたちを見たときや哀ちゃんに会うときの挙動不審を言ってるんだろうか。でも降谷さんが一番ということに嘘はないのでやっぱりクエスチョンマークが消えてくれない。
「……一番ならちゃんと一番見ててください」
もう十分不審者レベルで見てると思うんですけど。
なんだかストーカー被害者にストーカー加害者がもっと真面目にストーカーしてと怒られているような気分になる。
「……返事は?」
「えっあっ、……えっ? は、はい」
「次嘘ついたら捕まえます」
「つか」
「じゃあ僕、こっちなので。送っていけなくてすみません。気をつけてくださいね。ちゃんといつもの道を通って帰ってくださいよ」
「えっちょっ、」
嘘をついたら捕まえる。
そう言われた気がする。そもそもいつ私が嘘をついたのか聞きたかったのに降谷さんは幼い子どもを言いくるめるかのように矢継ぎ早に小言を口にしたかと思えば一瞬で背を向けられたので呆然とするしかない。本当に嘘をついてしまったのなら大罪すぎるけど、嘘をついた記憶が本当になくてなす術も無くなってしまった。
とりあえずは降谷さんの言った通りいつもの道を歩いて安全第一に帰宅します。
────────
「手遅れだった」
「ゼロ以外みんなわかってた」
おめおめと逃げ帰ってヒロの隠れ家の玄関をあけて放った第一声の返事はあっけらかんとしたものだった。殊の顛末を盗聴器越しに聞いていて寧ろけらけらと腹を抱えてヒロは大笑いしていて睨みつけることしかできない。みんなって同期のことだよな。まさか客にもそんなふうに見られてたなんてことはないよな。いやそんなことはどうでもいい。
「……人間相手なら勝負にすらならないと思ってた」
「まああんな態度取られてたんだし自惚れるのもわかるよ」
ひいひい笑いながら言われても煽られているようにしか見えない。馬鹿にしてるだろう。全力で。
「結局断ってたんだし、友達と遊ぶのが楽しいみたいなこと言われてて実質ゼロが一番なんだからそこまで拗ねなくても」
「すねてない。……断ってたのか」
呟いた瞬間笑い声が大きくなる。情けなくも裏に逃げて彼女の返事を聞けなかった俺を憐むならまだしもむせるほど笑うな。やめろ。おい。涙まで出てるぞこら。
「笑い死ぬかと思った。で、どうするんだ」
「……とりあえず、恋愛対象として見てもらえるように頑張りつつ、……彼女の視線を他所に奪われないように美貌を磨けばいいのか?」
「迷走してて笑うしかない。恋愛対象として見てもらえるようにだけ頑張れ。いっそ告白した方が早いと思うけどな」
「……降谷に言われたら嫌でも頷くかもしれないだろ」
「オレが言った手前アレなんだけど友達も渋られてたんだから恋人なんて恐れ多いですって断られる方考えろよ。ポジティブか」
「ぐ、」
それもそうだ。それもそうだが、なんでヒロはさっきから俺を笑いながら追い詰めてくるんだ。傷口に塩をものすごく塗りたくってくる。変装で出かける以外は裏方仕事しかできない引きこもりのストレスか? 俺だけ表舞台に立って、同期としては話せないが安室としては会話ができる俺への八つ当たりか? いやヒロはそんな心の狭い男じゃない。ただ俺で遊んでるだけだ。
「でも告白して断られたとしても無理にでも軌道修正してそういう対象として見てもらうか、長期戦で地道に頑張るしかないだろ。軌道修正したほうがいいとオレは思うけどな」
軌道修正なんて無理だ。だって彼女はあんなにも友達を謳歌している。俺と自然に友達をしてくれている。なんなら友達であることに誇りすら持ってくれている。それゆえの「安室さんとはお友達です!」ドヤァ!だろ。あんなにも友達を強要したツケが今更きてしまった。今更彼女にそんなこと言ったらせっかくの信頼が露と消えてしまいそうで、それは嫌だ。
あいつらの忠告が今になって痛いほど突き刺さる。だってあの時は彼女が帰ってきてくれたことに浮かれまくっていたし、人間相手なら負ける気はないと本当に思い込んでいた。きっと二人にも指をさして涙が出るほど笑われてしまう。まだ振られてないのに失恋パーティーの準備すらはじめそうだ。俺の味方をしてくれそうなのは既婚者の伊達だけか?
「今更軌道修正なんてできない、から、周りを牽制しつつ少しずつそういう対象に見てもらえるように頑張る」
「荒療治の方が絶対いいと思うけどなあ」
「ふられたくない」
「うわ弱気」
うるさい。笑うな。なんだそのにやけた視線は。
2020/02/19