「なあ、お姉さんの職場行ったろ?」
「……行ったけど何か?」
「いやー同僚をストーカーで逮捕するのはつらいなーって思って」
「ぐ」

 冗談で言ってるのはわかってる。でも、あの人が相談に行ったらわりとアレというか、普通に捕まりそうなことをしているから罪悪感で胸が軋む。

「一線は超えないようにしろよ、ほんとに」
「職場教えてもらってねえのに行った時点でアウトだろ」
「……いや自分でわかってんならやるなよ。今んとこギリギリセーフだからな。お姉さんがお姉さんだから許されてるだけで。そもそも断られてるのに」
「はっきり言うなよ、泣くぞ」
「自覚してるならいいんだよ」

 応援するだけじゃなく、こうして暴走はしないように職務を全うしつつ俺を抑えてくれてる萩には、口には出せないけど感謝している。俺が逆の立場なら諦めろと言ってしまうだろう前途多難な気持ちを否定せず、道を違えないようにだけ気をつけろと言ってくれている萩原には本当に頭が上がらない。

「てかお姉さんもゆるすぎるからこわいよな。陣平ちゃんだから危ない目にはあってないだけで、これが他の男ならちょっと、……」
「ほんとあの人やべえよな」
「……」

 危険人物と五十歩百歩なお前が続けるなどでもいうような胡乱な目で見られて目をそらす。いやわかってんだよ、人のこと言えないのは。
 子供扱いはやめてくれと散々言ってるけど、お隣さんで、子供の頃からの俺を知っているからこそおおごとにしないでいてくれてるだけで、同じことを同じ年齢の知らない男がやったら即通報されてもおかしくない。それはわかってるんだけど棚にあげさせてほしい。

「……手錠を同僚にかける心の準備でもしとこうかな」

 頼むからそんな目で見るな。
 一線はこえねえ。
 頼むから疑いの目を向けるな。
2019/10/05


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