「わたしは死なないから、だからアルヴィン、大丈夫だよ」
「……どういう意味」

 低く唸るように出された問いに小さく首をかしげる。喜んでもらえると思ったのに。間違えたのかな。まだわからない。アルヴィンのこと、人間のこと。きっと、ミラのほうがよくわかってる。彼女の成長は著しい。

「だから、何回裏切ったって平気だよ。次はわたしを撃ってね。他の子は駄目だよ、人間は弱いから」

 ぼろり、と大粒の涙がアルヴィンの頬を伝って目を見開く。確実に間違えた。涙を流されないと間違いに気付かないなんて愚かだ。だけどわたしには人間の機微がどうしても理解できない。
 ぼろぼろと流れる涙を拭おうと伸ばした手を掴まれて首をかしげる。触るな、ということ? だけどアルヴィン、これだと皮膚同士が密着していて意味をなしていないよ。そう思って腕を引っ込めようとする前にアルヴィンに腕を引っ張られてからだごと密着した。

「もう、裏切ら、ない、……し、誰も傷つけたく、ない」
「でもアルヴィン、人は弱い。人は嘘つきだ。それはアルヴィンだけじゃない。別に責めてるわけじゃないよ。だってアルヴィンのは仕方がない。本で読んだよ、ああいうのは情状酌量の余地があるんでしょう? もしも、だよ、もしも次があったら、わたしを撃ってね。わたしは、死なないから。治るから」

 嫌だ嫌だときつくわたしを抱き締めるアルヴィンの背中をあやすように撫でる。わからない。アルヴィンはどうしたら気持ちが軽くなるんだろう。わたしはただ、アルヴィンが喜んでくれると思っただけなのに。

「ごめんね、どうして泣くの」
「信じてもらえないのは、自業自得だけど、撃って、なんて、言わないでくれ、頼むから。……もし、もし俺がまた、裏切ったら、」

 小さく浅く繰り返される呼吸に、か細くなっていく声を逃さないように耳を傾ける。

「……、お前が、俺を、撃って」

 続いた言葉に頭がぐわりと痛くなる。
 その言葉はわたしが言った言葉と似ていて、漸くアルヴィンが泣いてる理由がわかった。わたしはなんて愚かなんだろう。こんな、自らを差し出される言葉がこれほど辛いだなんて。

「ある、ごめ、ん。わたし、わたし、撃てないよ。アルヴィンも、だから、泣いてるの? ごめん、ごめんね、わたし、もう、二度とそんなこと、言わないから」

 泣かないで。

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