わたしのぶんをおすそわけ



最初に手に取ったのは歌舞伎揚。

「あれやろ?ヒルナンデスで先週やってたやつやろ?」
「そうそう、めちゃくちゃ美味しそうやってん。照史はスタジオで試食できてええなー」
「でも一口やで?もっと食べたいって思うよね」
「あとから食べられへんの?」
「ないない」
「えー、そうなん?」
「頑張ってくれてるスタッフさんに食べてもらってる」
「それはそうか」

次はたこ焼き。

「あ、ここ行きたい。きのこしゃぶしゃぶやって」
「きのこってヘルシーやろ?」
「そうなんちゃう、たぶん、知らんけど。お肉よりはヘルシーやろ」
「ここ六本木?収録終わりに行けるやん」
「待って、いろんな種類食べたいから誰か誘おう」
「ほんならその時いた人で行こう」
「Mステ終わりやったら全員行けるんちゃう?」
「ええやん!次出るのいつやろ?」
「まずはCD出さな」

次はお団子。

「次の仕事なんやっけ?ダンス?」
「ダンスリハやね。カメラ入らへんやつ」
「やった、カメラなしやったら安心やわ」
「せやな、ちょっと丸くても大丈夫。何時やっけ?7時からか」
「その前にメシやな。出前頼む?スタジオに運んでもらおう」
「中華にしよう。回鍋肉と青椒肉絲」
「絶対美味いやつやん」
「白米必須」
「なあ」
「ん?」
「どうしたん流星?」
「あ、中華嫌やった?」
「えーほんま?でももう中華の口やねんな」
「なー」

堪らず声をかければ口いっぱいにお団子を詰め込んだ照史と真夏ちゃんが振り返った。
2人ともリスか。
さっきからなんぼ食べんねん。
スタッフさんが楽屋に用意してくれた差し入れは全員分あったはずやのに、ほとんど既に2人のお腹の中や。
その上、この後中華の出前取るん?

「太るで」
「……」
「……」
「……え、なんか言うてますけど」
「なんも聞こえへんけど」
「聞こえてるやん!」

って言うてる間にまたお団子口に入れた!

「真夏ちゃん!さっきのインタビューで太ったからダイエットする言うてたやん!」
「え?言うたっけ?」
「言うた!照史やって最近どんどん大きなってるやん!2人とも趣味のダイエットはどうしたん!?」
「分かってんねん。そろそろダイエットせなあかんって、痩せなやばい」
「でもなー、目の前にたこ焼きあったらそら食べるで」
「お団子の香ばしい香りは罪」
「まあ、食べるわな」
「痩せたい、ほんまに、気持ちだけはある」
「いつでも痩せたい気持ち」
「気持ちだけやん。淳太からもなんか言ったって!」

カシャっ!

後ろを振り返ったらスマホ構えた淳太。
写ってるのは怒ってる俺とお団子で口パンパンにした照史と真夏ちゃんやろうな。
ニヤニヤした顔がなんか怖い。

「3人ともおもろい顔。Webに載せたろ」
「やめて!」
「それはあかん!」
「タイトルは2匹の子豚ちゃん」
「嫌や!」

子豚ちゃんって。
3匹の子豚にならへんように俺はちゃんと節制しよう。

「流星も食べよ!私のあげるわ!」
「いらんいらん!俺は子豚ちゃんにはならへん!」
「真夏の誘いを断るなんて流星らしくないで!?」
「って言うて俺を巻き込むつもりやろ!嫌や!」

俺にしては珍しく真夏ちゃんの腕を振り払って淳太の背中に避難する。
ずっとシャッター切ってるけど、これ、どこで披露されるんやろうな。

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