「とも」



あっつい!
汗やばい!
ぶっ通しで踊ったからスタジオ全体に熱がこもってる。
空調効いてへんのちゃう!?
俺も限界やけど小瀧が死んでる。
床で伸びてるわ。

「よし、おかわりいこか」
「真夏ちゃんアホちゃう!?」
「化け物か!」
「休ませろや!」

この体力お化け!
体力ある淳太も倒れこんでるのになんでこの人涼しい顔してるん?
汗かいてるけどそれを拭ってまた鏡の前に立った。
俺の隣で水を飲み干した神ちゃんも立って隣に並ぶ。
ほんまにもー、この同期2人あほすぎる。

「俺もおかわりするわ」
「ありがとう、とも」

にこって笑った顔に一瞬流星が反応したけど立ち上がる元気はもうない。
音楽鳴っても踊ってるんは2人だけ。
流れ落ちる汗を拭きながら俺もじっと見つめた。
ターンのタイミング、視線の動かし方、指先の所作までぴったり合ってて怖いくらいや。
アイコンタクトもなく完璧に合わせてくる2人に息を飲む。
なんやねん、ほんまに。
出会った頃からこの2人はすごい。
誰にも負けへんエンターテイナーや。
トゲトゲしかった性格や言葉は柔らかくなったけど、ダンスするときに見え隠れする2人のギラギラした光に目が眩みそうや。
一曲終わる頃には、スタジオ中から拍手が起こってた。

「かっこええなー」
「絶好調やん」
「今日調子ええかもしれへん」
「真夏」
「ん、ありがとう。……あ、せや。ともー」
「あそこやろ?やる?」
「やるやる。あとさ、とものさ」
「Bメロな」
「そこ。ちょっとずれてた?」
「今のでなんでわかんの!?」

神ちゃんが真夏ちゃん呼んでノールックでタオル渡して水渡して、名前だけでダンスのどこがおかしかったか伝わって、2人で修正し始めた。
以心伝心か!
事前に打ち合わせしたんかってくらいのやりとりに、思わず立ち上がってもうた。

「もちもんちが異常なんていつものことやん」
「異常て」
「普通やんな?」
「普通普通」
「ともとは同期やしさ」
「気持ち悪いくらい揃ってるやん」
「気持ち悪い言うなや」
「仲ええってことちゃう?」
「そのまんまか」

みんなにやいやい言われてるのに神ちゃんも真夏ちゃんもにこにこ笑って目合わせてる。
さっきのギラギラとか全然違う空気感になんか拍子抜けやで。
笑って休んだからか少しだけ体力が回復してきた。
小瀧が歯食いしばって立ち上がったのを合図に、また曲が流れ出す。
ピンと張り詰めたスタジオ。
鏡の前に並んだ8人。
また神ちゃんと真夏ちゃんのギラギラが俺を突き刺す。
まるで、真夏の青空みたいに。
俺が2人の後輩になった時から変わらない、目がくらむほどの眩しさ。

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