はじまりの綺羅星
※なにわ男子の藤原丈一郎くんメインです。
※ジャニーズWESTは出てきません。
※予備知識:真夏、神山、藤原は同期
「あ、真夏ちゃんや」
「は?ほんま?」
大吾が呟いた声に、さっきまでずっと煩かった大橋も黙って視線を動かした。
新幹線の通路を歩いて俺らが座ってる座席の8列くらい前に座った女の子、って歳でもないその人は、幼い頃も知ってるし今もテレビに出まくってる人や。
変装っていう変装もしてへんし、隣の席は空いてるようやった。
大阪から東京に行く新幹線の中ってことは、仕事帰りか?
「…挨拶行く?」
「行った方がいいに決まってるやろうけど、真夏ちゃんやで?」
「プライベートやったら怒られんちゃう?」
「はっすん、様子見てきてや。リーダーやろ?」
「俺!?」
「様子見て、機嫌よさそうやったら行こう」
「めっちゃ怖がってるやん」
「だって、怖いやん」
そういえば、ジュニアの頃から怖がられてたな。
他人に厳しくて、でも自分には死ぬほど厳しい。
神ちゃんと一緒にジュニアの雰囲気をピリッとしめるその存在は、稀有で、恐怖で、…少しだけ憧れてた。
「…っちょ、丈くん!?」
大橋の制止を聞かずに席を立った。
こんなんに怖がってる場合ちゃうんでほんまに。
どこが怖いねん。
バシッ!
「痛っ!?」
「よう望月」
「藤原!?」
手加減なしで叩いたら髪が乱れたのにすぐにサラサラ戻っていく。
相変わらず綺麗な髪やな。
むかつくことも多いけど、この髪だけは嫌いやないってずっと思ってる。
絶対言わんけど。
空いてた隣の席にドカッと腰を下ろせば、望月が少しだけ頬を緩めた。
「なにしてん」
「仕事、の帰り。そっちは?」
「俺らこれから仕事」
「へー、そうなん?」
「全然興味ないやん」
「そんなことないけど」
ほら、話しかければ全然普通やで?
恐怖なんかない。
あれ?
これってもしかして俺が同期やから?
「藤原1人?」
「大橋と大吾も一緒やで。後ろ」
「ほんま?えー、会いたい」
くるって後ろを振り返ったら座席の上にひょっこり顔出した2人。
ぎこちなくぺこって頭を下げたから、望月もぺこって頭を下げた。
「…私めっちゃ怖がられてるやん」
「だっさ!」
「うるさい!」
「目つき悪いからちゃう?」
「そんな悪くないし。あーもー、挨拶したかったのに」
言葉はきついけどズーンって落ち込んだ表情。
後輩、嫌いなわけじゃないんやろうけどな。
苦手なんやろうな。
「ジャニーズWESTさん元気?」
「なんでさん付けなん?」
「先輩やろ」
「まあそうやけどさ。私は同期やん。さん付けも先輩扱いもやめてや」
「…意外」
「なにが?」
「望月が”同期”って思ってるんって、神ちゃんだけかと思ってた」
あ、失敗した。
そんな顔させるつもりじゃなかってんけどな。
でも望月と神ちゃんが仲いいのは周知の事実で。
もちもんちーなんてコンビ名もついてて。
俺だけ取り残されてるとか、寂しいとか、そんな感情ちゃう。
そういうもんっていう事実。
「…気持ち悪い」
「はあ?」
「藤原が急に感傷的なこと言うから気持ち悪いわ」
「おまえ、ストレートに言いすぎやろ。剛速球ストレートか」
「相変わらず野球好きなんやね」
「望月は相変わらずスポーツ知識ゼロやねんな」
「オリックスは知ってんで」
「ほんま!?」
「チーム名だけ」
「ふざけんなや。ちょっと嬉しかった俺の気持ち返せ」
くすって、やっと笑った。
後輩でも先輩でもない、同じグループでもない。
同期って変な感じやな。
「仕事ってなにわ男子?」
「そうそう、久々に東京で仕事させてもらえんねん」
「ふーん」
「全然興味なさそうやん」
「そんなことないってば。興味あるし」
「でも俺には興味ないやろ。テレビ出てても俺以外見てるんちゃう?なにわ男子ってキラキラやし、俺のキャラとちょっと違うし」
「そう?」
不思議そうに首を傾げてこっちを覗き込んだ。
柔らかく笑った瞳は、昔となんにも変わってなかった。
「似合うと思うけど」
「は?」
「キラキラ。藤原に似合うと思う。めっちゃかっこええやん」
「っ、」
ただ思ったことを言っただけかもしれへん。
なんの意味もないやろうけど、心の隅っこがくすぐったくてしゃあない。
「なに言うてんねん!あほ!」
「いった!また叩いた!」
「じゃあな!望月に構ってるほど暇ちゃうねん!」
「じゃあなって、同じ車内におるやん…」
にやけてる口元を見られたくなくてもう一度頭を叩くと、やっぱり髪はさらさら流れていった。
なんか負けたみたで嫌や。
神ちゃんと、望月と、俺。
同期3人、仲が良いわけでもなければ悪くもない。
自分に厳しくて負けず嫌い。
そんなんが3人も揃えば、仲良しこよしはできへんやろ。
それが俺ら。
せやから、反撃したる。
「大橋!大吾!真夏姉さんが挨拶せえって」
「ちょ、藤原、」
「挨拶せんのか!?しばいたるわ!ってあっちで言うてんで」
「嘘やん!」
「すみませんすみません!すぐ行きます!」
「っ藤原!!!」
あーもーそんなに怖い顔して。
そんなんやから後輩に怖がられんねん。