星のスパーク



「待って待って待って待って待って!!!」
「うるさ」
「ビビリすぎちゃう?」
「ほんまに無理やって!!!や、こんといて、うわあ!」
「え、嘘やん」
「真夏ちゃん大丈夫!?」
「真夏ちゃんまで足折れたら笑われへんで!」

パパジャニの収録。
実は事前の打ち合わせで、子供と一緒に犬が2匹来ることは知ってたけど、真夏には内緒にしてた。
これも全部面白いリアクション撮れるんちゃうか?っていうスタッフさんの作戦やったけど、まさかこんなにビビるなんて。
玄関から入ってきた犬から逃げるように部屋の奥へ走った真夏は、フローリングの床で滑って盛大に転んだ。
めっちゃ面白いやん。
本人も撮れ高を気にしてしばらく顔を床とくっつけたまま。

「大丈夫?」
「……むり」

床に散らばった髪をゆっくり撫でて問い掛ければ、想像以上に涙声が聞こえて面食らう。
え、結構やばいかも?

「とも、私、今回はまじであかんかもしれへん」
「無理なん?大丈夫やって。マルテは大きいけど大人しいし、モズクは小さいから噛んだりせえへんよ?」
「大きさの問題ちゃう。存在の問題やねん。私犬と共演NG出してたのになんで?」
「あー、のんちゃんが『あいつ大丈夫ですー』言うてた」
「っ小瀧!!!!!」
「神ちゃんバラさんといてよ」
「ほんまに泣きそうやん」

さすがにメンバーもあかんと思ったのか照史もこっちに近づいてくる。
2匹の犬は流星としげがしっかり押さえたまま。
収録中止になんてなったらほんまにやばい。
カメラ回ってるけど、照史の声がお仕事モードより優しくなった。

「無理?どのくらい無理?」
「あーもー、無理って言いたくない」
「それもう無理ってことやん」
「ストイックと我慢はちゃうからな。どっち?」
「……無理」

ほんまに弱音吐きよった。
ストイック真夏の影も形もあらへん。
泣きそうなの我慢して照史の服を離さへん。
照史がスタッフさんにNGを出す前に、真夏の頭を優しく撫でる。

「うん、わかった」
「とも、」
「じゃあ我慢せえ」
「……え」
「これも仕事やし。やるしかないやん」
「もんち怖っ!」
「ジャックナイフや!ジャックナイフ神ちゃん来た!」
「ええー、真夏ちゃん可愛そうやん」
「仕事やろ?ちゃんとやれや」
「……鬼っ!ともの鬼!悪魔!なにが神や!」
「淳太、マルテとモズクをこっちへ」
「了解!」
「いけ!マルテ!モズク!」
「嫌ぁぁぁ!!!」

あ、泣かせてもうた。
部屋中を逃げる真夏に、遊んでくれるのかと勘違いした2匹がその背中を追いかける。
のんちゃんが爆笑してる声がカメラに収められて、これはこれで面白いやろ。

「テロップは『優しいはずの神山パパが?』とかやろな」
「『実は鬼の神山』でもええと思う」
「俺は真夏のことは甘やかさへんで?あんな辛そうな顔したらみんな守るやん。でもそんなん真夏のためにならへんし、面白くないし、収録なくなるとか絶対あかんし」

ほら見てみ?
真夏が限界やって顔でこっち見たらすぐ照史が飛んでった。
犬から守るように真夏の手を引いて、大丈夫やからって何度も視線を合わせる。
この空気を引き出すには、一回泣いてもらわんとな。



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