瞬きは花の咲いた音



「淳太くーん」
「褒められ待ちやめろ」
「……」
「真顔で睨むのはもっとやめろって」

ニヤニヤした顔から一瞬で感情のない真顔。
どんだけジェットコースターな表情筋やねん。
昔はもっとギラギラしてて人の評価をこんなにもわかりやすく求める子ちゃうかったと思うんやけどな。
最近、のんちゃんと仲良いから犬っぽさが移ったか?
俺が楽屋に入った時からわざとらしく掲げられた真夏が表紙の雑誌と、まるで尻尾振った犬みたいな真夏の表情。
ここまで『褒めて!』って全面に出されると調子狂うわ。

「淳太、褒めたってよ。さっき神ちゃんにけちょんけちょんに言われてん」
「え、神ちゃんが?」
「表紙で売れたからってまだまだやろ、重版狙おうやー言われて」
「言うてること正解やん」
「でも真夏的には褒めてほしかったからなー、求めてたものとはちゃうかったなー」
「はまちゃんが褒めたら?」
「褒めたけど満足せえへんみたいやわ」
「だってはまちゃんはいっつも褒めてくれるやん」
「流星っていつ来る?」
「流星はちゃう!あの子は私がなにやっても褒めるんよ!」
「もー、淳太、意地悪せんと褒めたって」
「なんでや。俺の称賛は高いで?」
「…頑張ったのに」

しゅんってなった真夏は机に突っ伏してぶすってした顔で俺を睨んだ。
なに考えてるか、なんとなく分かるで。
特別な周年が終わって、みんなそれぞれの得意な領域で成果を出し始めてる。
真夏だって自分の力に自信があるから全力で頑張ってはいるけど、求められてるものを提供できてるかのチューニングは必要で。
自分が表紙の雑誌がちゃんと売れてることは知ってる。
でもメンバーにどう思われてるかも気になる。
特に、昔から点数をつけてる俺の評価。

「見して?」
「うん!」

ええ返事やな。
差し出した雑誌のページをパラパラ捲って誌面を確認すると、どれも可愛いし綺麗やし魅力的やと思う。
でもそれはそれ。
こんなんで満足されたくはない。
俺らの望月真夏は、こんなもんじゃない。

「俺も神ちゃんと同じやな。重版取らな褒めへん」
「ああー、やっぱりまだあかんかー」
「残念やな。次も頑張ったらええねん」
「うん、頑張る」
「まあ、焼肉とは言わへんけど美味しい中華ってとこちゃう?」
「中華、え、ほんまに!?今日!?」
「ええよ?」
「やったー!めっちゃお腹空いてん!中華!嬉しい!ありがとう淳太くん!」

次100点取れるように、エネルギー補給といきますか?



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