「はぁ」
昨日から池袋に遊びに来てて。
2泊3日で京平のの家に泊まってる。
あの抗争以来、仲良くなって、よく会う様になっていった。
そして、俺から「好き」と伝えてから、一ヶ月くらい経つ。
「はぁー」
また、ため息が口からこぼれ出る。
まぁ、仕方ない事だ。
好きな人との進展がない、そんなの今まで一度もなかったから。
「おい、千景、お前飲みすぎだぞ」
「…いいじゃん、今日くらいさぁ」
「お前、明日帰るんだろ? バイクなんだし少し控えろ」
「はいはい」
京平だから仕方ないか…。
このまま、酔った勢いってのないかなぁ。
無理か、京平殆ど飲んでないし。
「…か、げ………千景!」
「!? わりっ、ぼーっとしてた」
「どうした? 気持ち悪くなったのか?」
京平は心配そうな顔で、俺の顔を覗き込んできた。
「…や、そうじゃないけど……。なぁ」
「なんだ?」
明日帰っちまうんだし、今日くらいいいか…。
「俺達、付き合ってるんだよな? いいよな? 京平」
千影は京平に凭れ掛かる様になり、京平を見上げる。
「少しくらい、進展したいんだよ。不安なんだよ」
京平は黙って俺の話を聞いてくれた。
「俺は、京平が好きだよ。でも、京平から好きって言ってくれた事無いし、進展も無い。
不安なんだよ、本当に俺の事好きなのか? って」
黙って俺の話を聞いてくれてた京平が口を開いた…けど。
「千景、お前飲みすぎだぞ」
「…何それ、京平は格好いいし、周りにはどんどん人が集まって…俺は何時も除者扱いされてる様で…!」
「千景っ!!」
「!?」
肩を掴まれ、名前を呼ばれた。
京平は何時もは見せないような、鋭い目付きになった。
初めて会った、あの抗争の時みたいな、目付き…。
大声を上げられビックリして、黙った。
そんな俺を見て、京平が……
「俺は…ちゃんと、千景の事を好きだ」
「だったら!」
「好きでもない奴を俺は家に泊めたりなんかしない、それに、千景を除者にした覚えもない」
「…でも……」
俺を見つめながら、真剣な顔をして話してくれる京平。
「俺達手も繋いでないんだよ? 毎日会えるわけじゃないし、少しでも進展したいんだよ」
俺は、今…泣きそうな顔してるんだろうな…。
「俺はもっと、京平と一緒に居たい! 少しでもいいから、進展したい…!」
「千景…」
「そう思っちゃダメなのか? 俺の我侭に過ぎないのか?」
目に涙を溜めながら、京平に向って、自分の思ってる事を吐き出していた。
そんな千景に対して、京平は目に溜まっている涙を拭った。
そして……
「千景、少し…目を閉じろ」
「え?」
「いいから」
京平の顔が少し赤くなってて、態度が素っ気なくなった…。
「おぅ…?」
千景は京平に言われたまま、目を閉じた。
目を閉じてから、数秒、唇に柔らかい感触がした…。
千景が目を開けてみると、京平が千景に…キス、していた。
口に少し触れるだけのキス。
驚いて、千景は声が出なかった。
「なんだ? 進展したかったんだろう?」
「…そ、そうだけど」
京平からしてくれるなんて、思っても見なかったから…
心の中でそう思いながら、ビックリしている。
「さ、今日はお開きにすっぞ」
「え、でも」
「これからの事、じっくり話そう。な?」
「…うん」
今日は酔いにまかせて……
(千景、ちゃんと、好きだぞ…)
(…俺もだよ)