「あ、おはようございます」
『おはようございます。今日も早いですね?』
日課のゴミ捨てとこひなのお見送り、そこでいつも会うおとなりさん。
「あぁ、早起きが癖みたいで。もう年かな」
くすくすと笑いながら冗談として聞いてくれる彼女は無邪気で可愛らしい。
実際冗談じゃないから心苦しくもあるが……。
『こひなちゃんもちゃんと起きて偉いね。気を付けて学校行くんだよー?』
「ハイなのです」
「『いってらっしゃい』」
最近では毎日こんなやり取りをしてこひなのお見送りを2人でしている。
彼女が隣に越してきたのは信楽が来た後くらい。
何かと騒がしい我が家の隣なので、いつの間にか
仲良くなっていた。
初めましては、信楽がナンパしてた時かな。
『そう言えば、今更ですが市松さんは奥さんいらっしゃらないんですか?』
「……えっ?」
『あ、いやっ、気になったもので。気に障ったならすみません!』
急な話の振りに、答えることができず動揺してしまった。
奥さん? あれ、俺、こひなのお父さんに見えるのか!
嬉しいような悲しいような。
悲しい? 何でそんな気持ちがあるんだろう……。
「こひなの両親は仕事で何処かに行ってるとしか知らないんだ」
『え、コックリさんはお父さんではなかったんですね。すみません、何か勘違いしてしまって』
彼女は狼狽え、頭を下げてきた。
『でも、そうですよね。市松コックリって凄い名前だなって思ってたんですよ』
恥ずかしそうに頬を掻く彼女に苦笑いを返しながら、少し抜けてるなぁと思ってしまった。
「こひなとは色々あって世話してるんだ。ほら、カップメンしか食べないだろ? 誰かが見てないと」
『何か、コックリさんが旦那さんなら、良い家庭が築けそうですね!』
笑顔で言うもんだから照れ隠しもできず、唯赤面するしかなかった。
『照れるコックリさんってレアですね』
「なっ、うるさい!」
『あっ、もうこんな時間だ! コックリさん、仕事があるんでまた暇な時にでも!』
俺が返事をする前に駅の方に駆け足で行ってしまった。
おとなりのお姉さん
(コックリさんが彼女を好きだと気づくまで後少し)