『銀さんの髪って、くるくるパーだけど綺麗な色してるよね。触ってもいい?』

「夢子ちゃ〜ん? 何それ誉めてんの? 貶してんの?」

よく行く公園、ベンチに二人で座って定治と神楽ちゃんが遊んでるのを眺めてる。

横に座る銀さんの髪は太陽に当たってキラキラと輝いていた。

『うーん、まあまあ誉めてるって事で、触っていい?』

「正直すぎるのも良くないと思うな銀さん。てか、何でそんなに触りたいんだよ? もしかして、夢子ちゃんてば銀さんの事好きなんですか〜?」

ニヤニヤとしながら私の顔を見てる銀さん。
その顔は気持ち悪い。

『銀さんの事、好きだよ?』

そう言うと銀さんのニヤけ顔は、言葉を理解すると真っ赤に染まった。

「ぇっ、ぇええ?! まっ、マジでか」

『うん。神楽ちゃんや新八くん、真選組の人達もみーんな』

わざとらしい笑顔で言ってやれば、銀さんは勢いよく項垂れた。

『わー、やっぱりふわふわで触り心地いいねー。雲ってこんな感じかな』

項垂れてる銀さんの頭を遠慮なく撫で回す。

「もう、好きにして。銀さん何かどーでもよくなっちゃった」

『じゃあ遠慮なく』

そう言うと撫で回していた頭を両腕で優しく包み込んだ。

「…………」

『私には髪だけじゃなくて、銀さんそのものがキラキラして見えるんだ。優しく包み込んでくれる月みたいな感じ』

神楽ちゃんは太陽みたいだよね、何て言いながら更に続けた。

『やっぱり、みんなも好きだけど銀さんは一番好きかな』

「夢子……」

少し赤くなってる顔を見られない様に包み込んだはずの頭は、いつの間にか腕の中から逃げ出していた。

『銀さん……』

「……俺も、ぐはぁっあ!!?」

と、そこに神楽ちゃんが突っ込んで来た。

「夢子よくやったネ! 銀ちゃんもこんなので騙されるなんて、情けないヨ」

突っ込んで来たと思ったら銀さんの肩を掴んで激しく揺らし始めた。
理由は知ってるんだけどね。

「は?!」

『ごめんね、銀さん。実は……ドッキリでーす!』

「はぁあああ!?」

そう、最近テレビで見たビックリ大賞を真似したいと、神楽ちゃんと企んでいたのだ。

「まあ、夢子の演技は最高だったネ! 騙されても仕方ないアルヨ」

神楽ちゃんは貶し終えたのか、銀さんの肩を抱きヨシヨシと慰め始めた。

『でも銀さん、さっき言いかけてたの何て言おうとしてたの?』

俺もという言葉の続きは……?

「何でもねーよ。今度は俺がドッキリ仕掛けてやっから、覚悟しとけよお前ら」

そう言うとさっさと公園を出ていってしまった。

「銀ちゃんいじけてたアル。少しやり過ぎたネ……」

『私、追いかけてくる!』

任せたアルヨー!! と大声で叫んでる神楽ちゃんに手を振り銀さんが歩いていった方へと走った。

いつもの定治の散歩道。
河原を土手沿いに歩く道で銀さんを見つけた。

『銀さん! はぁっ、探したよ……』

「……何しに来たんだー? また、ドッキリか?」

銀さんは私の顔を見てもくれなくて、茶化してるつもりでも何処か冷たく感じる。
やっぱり傷つけたんだ……。

『ごめんなさい。その、傷付けるつもりじゃなくて……』

「もういい、もう怒ってねーから、そんな泣きそうな顔すんな」

傷付けて勝手に泣いて、最低なのに、何で優しくしてくれるの。
その優しさがずるいよ。

『あのね、好きだって言うのは嘘じゃないの。私は……』

「俺も、の続き教えてやるよ」

私の言葉を遮ると、銀さんの顔が私の目の中いっぱいになった。

キス……された?

『……ん?!! はっ、銀さん!』

「ビックリしたか? これで、おあいこな」

急な出来事にほおける事しか出来ない私の手を引いて、銀さんは歩きだした。

「実はねー、神楽と組んでたのは銀さんで、ドッキリに引っ掛かったのは夢子ちゃん。って事!」

ニィと笑う銀さん、言葉に付いていけない私。
私がドッキリに引っ掛かった?

『え、じゃあ、キスがドッキリ……』

「違う違う! 公園から俺を探す所までがドッキリ! 俺が夢子を好きでキスしたのはマジだから。そこんとこ間違えないよーに!!」

言葉を理解したとたん顔に熱が集まりだし、それが恥ずかしいからなのか怒ってるからなのか、もう訳が分からなかった。

「夢子が俺の事好きなのは気付いてたし、でも中々進展しないもんだからよぉ。これでも銀さん我慢したんだよ? お前が抱き締めてきた時、胸が当たってんのどんだけ銀さんJr.が我慢したか……ぶっは!?」

急激に自分の行為が恥ずかしくなり、銀さんの鳩尾目掛けて鉄拳を喰らわせた。

『ぎ、銀さんのバカー! 先に帰る! ……後、これからもよろしくね!!』

それだけ言って万事屋まで走って逃げた。

「ったく、素直じゃねぇーな」


悪戯好きな恋

(たでぇまー、あれ? 夢子は?)
(銀さん、夢子さんに何かしたんですか? 帰ってくるなり僕の家に泊まるって、荷物まとめて出ていきましたよ)
(銀ちゃん作戦失敗アルカ? 折角手伝ってやったのに、情けない男ネ)
(え、ちょっ、あれぇえええ!?)

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