「へぇ、ここが夢子ちゃんの家かぁ。女の子らしくて可愛い部屋だね」

あざとい、あざといぞトッティよ。

『あはは、お世辞はいいよー。飲み物用意するから適当に座ってて』

彼との出会いは仕事先のスタバァ。
まだ出会って一週間の女性の家に上がるなんて、松野トド松恐るべし。

『お待たせー、熱いかもしれないから気をつけてね』

「ありがとー。あ、ホットチョコ? 美味しいよ」

マグカップから香るココアの香り、一口口に含むと美味しいと顔を緩ませた。

私がスタバァで働くようになって一週間経つが、回りの女子からのトド松君への引きがすごい。
聞くところによると、六つ子でサイテーと言う事くらいしか分からなかった。

主語が無さすぎるぞイマドキ女子。

『あ、タオルとか要る? そんなに濡れてないとは思うけど』

「いや、いいよ。雨宿りさせてもらってるだけで十分だから!」

顔の横で手を振る、逐一仕草にあざとさを感じるぞトッティ。

まあ、末っ子と言うだけあって甘え方は上手らしく、スタバァ上がりが一緒になり私の家付近で雨に降られ、家で雨宿りをする流れになった。

そして、トド松君より二歳年上の私は、年下異性に甘えられると言うあまり無いシチュエーションに勝てなかったのだった。

「夢子ちゃんて彼氏いないの?」

『居ないけど、どうかした?』

家に男を匂わすものなど無い。
彼氏もいなければ、兄弟すらいないのだから。

「あ、いや、居たらお邪魔するの悪かったかなって。……でも、居なくて良かった」

テーブルを二人で囲んでる六畳ほどの部屋で、一人分間をおいて座っているにも関わらず、ほっとした様な嬉しそうな彼の顔が凄く近くに感じて恥ずかしくなった。

『……あっ、雨、止んだかなぁ』

視線をずらしながら窓を見る振りをする。
どうせカーテンで締め切っていて止んでるかどうかなんて、分かりもしないのだし、ただただ、トド松君から視線を外したかった。

「やっぱり、お邪魔だったかな……?」

『え、いや、別に』

恋愛経験がない訳ではない、ただ、年下に免疫がないのだ。

初めての就職先はスタバァのセカンドマネージャー。
研修から今まで年上としか絡まなかったし、今まで付き
合ってきた彼氏も年上ばかり、あまり頼られる事もないし、年下とどう向き合えばいいか分からない。

だから、そんな潤んだ瞳で見ないで!

「あんまり僕の顔見てくれないし、雨の事気にするから、本当は嫌だったのかなって……」

『いや、あの、……あ、雨が酷そうだから泊まっていく?』

「本当に!? ありがとう夢子ちゃん!」

もう、ほんと恐ろしい、松野トド松。
雨なんかとっくに止んでるけど、もう知らない。

「夢子ちゃんは優しいなぁ」

『そうかな? あははは……はぁ』


末っ子の腹は黒い

(トド松君のお布団、引いとくね)
(えっ、同じベッドじゃダメ?)
(……どうぞ)
(わーい)

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