匿名様
企画リクエスト




「………」

嫌な夢を見た……様な良い夢を見たような……。
良かったのは最後だけか。

俺が見たのは、帝人や杏里達が、俺の知り合いがどんどん消えていく夢……。
恐くて、寂しくて、最後には何も無い暗闇。

でも、そこにあの子が現れた。
手を差し伸べてきた、あの女の子。
あの時、俺は杏里よりも沙樹よりも綺麗な子だと思った。

とても柔らかい笑い方をする子だった。

「学校、あるんだっけ……」

自分の部屋で、呟く。

用意しているうちに、徐々に目が冴えてくる。
頭も冴えてくる。
さっきの夢がより鮮明に蘇って……。

段々不安になってくる。
本当に、皆消えてしまっていたら。
居なかったら。

考えている内に、足が動いていた。

「はっ……はっ」

学校まで走る。
走って走って走る。
帝人や杏里達に会うために。

「はっ……は…」

見つけた……。
前の方に帝人と杏里が二人で歩いているのを見つけた。
よかった。

「みかっ!!」

『きゃっ』

帝人の名前を呼ぼうとした瞬間、誰かとぶつかった。

「悪い、いそi……」

横目で帝人達を見ながら。
ぶつかった子に手を差し出した……。

『いえ、こちらこそ済みません』

その子は俺の手を取った、その時、変な感じがした。
俺はその子の顔を知ってる、あの夢に出てきた女の子だった。

「えっと……」

『ごめんなさい、私、急いでいるので。本当にごめんなさい』

「え、あっ」

女の子は走り去ってしまった。
名前も聞けなかった。

「正臣?」

「! 帝人?」

「おはようございます。紀田君」

「あ、おはよう」

「はい」

「サンキュ」

帝人が俺の鞄の砂を叩いて、渡してくれた。

「どうしたの? こんな所で」

「ちょっと、な」

二人が居た事の安心感より、あの夢の最後に出てきた、あの子が気になってしかたない。

一日中あの子の事を考えてた。
帝人達とはクラス違うし。
授業中は殆ど、ボーっとしていた。

あの子が気になってしかたない。
確かにあの子だった。
放課後……。

「わりっ! 今日は用事あるから、帰るわ」

「そうなんだ、じゃぁしかたないね」

「また明日なー!」

「じゃあね」「また、明日」

帝人達と別れ、あの子を捜す事にした。
ぶつかった所に戻ってみる。

何時も登校する時に通る道。
学校の校門が見える通り。

居る分けないと思うのに、足が速くなる。
朝にあの子とぶつかった場所に着いた。

そこには……

『あっ……』

あの子が居た。

『あの、今朝は済みませんでした』

「いや、俺の方こそ」

『その……』

歯切れの悪そうな顔をする彼女。
それでも。
俺を舞っていてくれたのかと思うと、顔が緩んでしまう。

『変な事、言うかもしれませんが、聞いてもらえますか?』

「え、別にいいけど」

決心したように彼女は話し始めた。

『私、昨日夢を見たんです。その夢はとても悲しい夢だったんです。ある男の子が叫んでるんです。
行かないでと、叫ぶんです。男の子の友達がどんどん居なくなって、最後には一人になってしまって……』

彼女はそこで少し話を止め、話続ける。

『だから私、手を差し出したんです。「私を信じて。私は、貴方の傍にずっと居るって」』

「……」

彼女の言っている夢は、俺が見た夢と一緒だった。
そして、俺は確信した。

あの女の子が、彼女である事を。

『それで、その男の子が貴方にそっくりなんです。変ですよね、こんなの……』

「変じゃないよ」

これは、運命だと思ってもいいのかな。

「俺もその夢を見た。信じられない事だけど、俺は君の手を取った」

確かに君の手を……。

「俺は、君を信じて手を取った。君なら、ずっと傍に居てくれると思ったから」

今、俺は泣いてるかもしれない。

情けない……。

いろんな事から目を背けてきた俺を、真っ直ぐ見つめてくれた。
君が居るから。

『私はずっと貴方の傍に居るから、泣かないで』

彼女はそういって、あの夢の時みたいに手を差し出してくれた。

手の上にはハンカチを乗せて。

「ありがと」

『どういたしまして』

彼女はそう言って、柔らかく笑った。
つられて俺も笑った。


悪夢のような…

(君のおかげであの悪夢は見なくなった)
(ずっと、俺の傍に居てくれ)

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