『阿伏兎さん』
「何だ?」
『兎って寂しいと死ぬんですよ』
「はぁ?」
何言ってんだコイツは。
兎ったって俺は夜兎だぞ、寂しくて死ぬ訳ないだろ。
『だから、兎は寂しいと死んじゃうんです!』
「だからって俺達は死なないし、お前は夜兎でもないだろ」
そう、コイツは夜兎でなく人間だ。
『でも、寂しくて死ぬのは兎だけじゃないんです。ハムスターとか、人間とか……』
「ようするに、この前お前だけ置いて任務に行ったからそんな事言ってるんだろ」
『だって、寂しかったんですよ! 死ぬかと思うくらい……。予定より帰って来るの遅いし、阿伏兎さんがこのまま帰って来なかったらどうしようってっ……!!』
「分かった、分かった。悪かったよ、夢子を置いてった事」
ったく、可愛いヤツ。
オジサンどうにかなりそうだ。
『私が寂しくて死にそうになるのは、阿伏兎さんだけです』
「俺も夢子が居なくなったら死んじゃうかもな」
『何でですか?』
「それ、聞くか?」
『聞きだいです』
「……そりゃ、愛してるからだろ。すっとこどっこい」
『私も、阿伏兎さんが好きです!』
その後。
阿伏兎が部屋から出ると……。
「阿伏兎、イチャイチャしてると殺しちゃうゾッ!」
「なっ! 団長!!?」
書類を持った神威がドアの前に……!
兎は寂しいと死ぬって言うけど其れは兎だけじゃない
(夢子、寂しくて死ぬ前に団長に殺されそうだ)