見た目が違くたって、血が繋がってなくたって、一緒にいられるならどうでも良かった。












パチリと目が開いた。どうやら寝てたみただけど、顔だけ動かして周りを見ればここは私の部屋とそっくり…、ていうか私の部屋だ。

のそりとベットから上半身だけ起こすと、頭がズキッと痛んだ。

そこでハッと気付く。カーネルじいさんの家までパンを届けに行って、じいさんの様子がおかしくてじいさんが怪物になっちゃって―――。


「(夢、だったのかな)」


なんだか現実味がなさすぎて思わずため息が出てきた。しかし部屋の外から聞こえてきた声で一気に夢から覚めた気分になった。

静かに部屋を出てリビングのドアを少し開けて中を覗いてみると、母さんが誰かに対して大声で怒鳴ってるのが見えた。


「冗談じゃないわ!あんな怪物と戦わせるためにナマエを連れて行くの!?」


もう少し開けて覗けば、怒鳴られてるのは絵描きのおじさんだった。(なんで絵描きのおじさんがうちにいるんだろ)



「あれだけ怖い思いをしたのよ!?それなのにまた同じことを繰り返させるって言うのね!?」
「さっきも言ったけど、あの怪物…………。AKUMAと呼ばれる殺戮兵器は特定の者にしか壊せない」


「その特定の者と言うのは、イノセンスという神の力を持った武器に選ばれた者しか倒せない」


「だから何だって言うの!ナマエはまだ10歳よ!世界のためだのなんだの、そんな大きなものを背負える歳じゃないわ!」
「イノセンスの適合者に歳は関係ないよ。例え小さな子供だろうが適合者ならエクソシストにならなきゃいけない」


アクマ。イノセンス。神の力。エクソシスト。全く聞きなれない言葉がつらつら並べられてるけど、それが母さんが怒ってるのと何が関係あるんだろう。

思い切ってドアを開けて「何してるの?」と聞いてみる。
ずっと母さんの隣で黙っていた父さんが「あぁナマエ。気分はどうだ?」と頭を撫でながら聞いてきた。
「大丈夫」と答えると「そうか」と優しく微笑んでくれた。

そして思う。「あぁ、あれは夢じゃなかったんだ」と。


「ナマエ!あなたは何も関係ないの。昨日のことは悲しい事故なの。だから部屋に戻って、」
「ナマエというんだね?」
「あ、はい」


母さんを遮り「私はフロワ・ティエドール」と自己紹介を始めたおじさん、もといフロワさん。


「名前から見て日本人のようだねぇ」
「あー、自分でもよくわかってなくて」
「いや、君は日本人だよ」


「そのキレイな黒髪と黒目がその証拠だ」とニッコリ笑われて思わず顔が熱くなる。キレイ、と言われたのは初めてだ。昔はよくバカにされていたけども。


「私の知ってる子も日本人なんだけど、その子もキレイな髪で切れ目で、まぁ口は悪いんだけど」


何を思い出しているのかわからないけど、なんか嬉しそうに喋ってるフロワさんは「それはとりあえず置いといて」と言ってから、さっきの嬉しそうな顔はどこへ行ったのか、真面目な顔になった。


「ナマエ。君はイノセンスに選ばれた適合者、つまりエクソシストなんだよ」
「は、はぁ」
「エクソシストはAKUMA………。昨日見た怪物を覚えてるかな?」


そう言われて、一気に過ぎる昨日の光景。怪物によって粉々に砕け散って行った皆。気付かないうちに肩が震えてきている。


「君にはアクマを壊す力があるんだよ。昨日、君は君のイノセンスであのアクマを壊したんだ」
「私が、壊した」
「そうだよ」


フロワさんの黒い服のポケットから出てきたのは、昨日私の手元に落ちてきた光る石だった。


「これは君のイノセンス。このイノセンスに他でもない君が選ばれたんだ。わかるかい?」
「………。」


手のひらの上でキラキラ光っている石、イノセンス。まるで母さんに抱き着いたときみたいな安心感がこの石から伝わってくるのは気のせいんだろうか。


「AKUMAは今もこの世にどんどん増え続けている。そうすればもっと人が消えていく」
「そんなのナマエに関係ないでしょう!」

黙って聞いていたのかと思えば、母さんが怒鳴って私とフロワさんの間に入り込んできた。


「エクソシストはこの子の他にもたくさんいるんでしょう!?だったら別にナマエを連れて行かなくたっていいじゃないですか!」
「ロゼ、」
「あなたも何か言ってちょうだい!」


母さんは黙り続けてる父さんに「ナマエが危険な目に合うかもしれないのよ!?」と話を振ると、父さんは私の顔をジッと見つめてからこう言った。


「お前は、どうしたい?」
「え、」
「フロワさんの言う通り、昨日みたいな怪物と、お前は戦わなきゃいけないんだそうだ。それが危険なことはわかるな」
「う、うん」
「父さんも母さんも、そんなことお前にしてほしくないしせたくない」
「それでも、ナマエには戦ってもらわなければいけない」


父さんのあとにフロワさんが続いた。


「ナマエ、AKUMAは世界の終焉のためにどんどん増え続けるだろう。それはつまり、今目の前にいるお父さんとお母さんが平和に暮らせないということなんだよ」
「っ、」


父さんと母さんが、平和に暮らせない。


「昨日みたいに、消えちゃう、かもしれないの……?」
「そうだよ。でも君がエクソシストになれば、遠くても二人を守ることができる」
「私が、父さんと母さんを守るの?」
「そうだよ。ナマエにしかできない」


私が、二人を、怪物から、AKUMAの恐怖から、世界の終焉から。

守ることができるなら―――。


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