本能で俺と同じだと思った

(Side:萩原)

初めに違和感に気付いたのは、俺だった。ある朝、いつものように登庁してきた松田の様子がおかしかったから。香澄ちゃんを見て、まるであの日の俺のような反応をしたから。

きょとんと首を傾げた香澄ちゃんを、それはもう大事そうな目で見つめる姿に本能で俺と同じだと思った。その日の夜「松田、お前も戻ってるだろ」と半ば断定的に尋ねれば、サングラスの奥の目が大きく見開かれる。

「……何か、知ってんのか」と呟いた松田への返事はもちろんNoだ。「何も知らないよ。でも、俺も一回戻ってるんだ」と言えば「どう、いうことだよ…」と震える声が返ってくる。「4年前、俺と香澄ちゃんが解体した事件あったろ。あの時、香澄ちゃんは一回死んでるんだ」と俺の声も微かに震えた。

思い出すだけで、息が詰まりそうだった。防護服は、その性能が故に長時間は着ていられない。けれど、爆弾を目の前にしている以上、着ない訳にはいかない。だからこそ俺が防護服を脱いで休息を取る時間を少しでも確保するために名乗りを上げてくれたのが香澄ちゃんだった。

香澄ちゃんが死んだ後、目が覚めたら過去に戻っていた俺は何が何でもその結末を覆したかった。「だから、タイマーが止まった後、解体を続けたんだ。遠隔で、爆発することが分かってたから」と拳を握り締める。

「今日の朝、香澄ちゃんを見た瞬間の陣平ちゃんの顔を見て同じだって分かったよ」と肩を竦めて笑った俺に松田は苦しげに顔を歪めた。「……ああ、俺もお前と同じだよ」と呟いた松田はゆっくりと話を始めた。

松田を押し退けてゴンドラに乗り込んだ香澄ちゃんが、もう一つの爆弾の居場所を伝えてからいなくなったこと。その数日後、俺と同じように目が覚めたら過去に戻っていて、それが今日だったこと。

「もう、絶対あの日と同じことは起こさせねぇ」と拳を握り締めた松田の気持ちが痛いほど分かる。俺も、そうだったから。「香澄ちゃんだけじゃなくて、陣平ちゃんにも死んでほしくないからね」と困ったように笑えば、松田はきょとんと目を瞬かせてから声を上げて笑う。

「ハハハッ!死なねぇよ!死ぬつもりなんて毛頭ねぇし、アイツを死なせる気もねぇ」と笑った松田にホッと肩の力が抜けて「お前らが死なないように、俺もやれる事はやらせてもらうぜ」と笑った俺は、松田と拳をぶつけた。
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