帳越しに綾を見た

 あまりの無気力さにその場でただただ揺れるフロイド先輩に対して、イデアさんは何か気がついた様子だった。それにまた気がついたのは私だけではなく監督生もだったようで、私たちは同時に首を傾げた。
 徐々にオルトの持つ端末へと周囲の視線が集まると、イデアさんはやや口ごもりながらも、声を必死に絞り出している様子だった。

「フロイド氏は……この世界に対して壮絶な“飽き”が発生してるんだと思う」
「飽き!?」

 イデアさんの言葉に、一同が声を揃えた。「世界」への飽きだなんて、これまたスケールの大きい話だ。しかし、この夢でのフロイド先輩の話を思い返せば、その言葉は確信めいているようにも感じた。しかしその言葉だけでは世界への飽きがどのようなものなのかイメージできない私たちに、イデアさんが淡々と言葉を連ねた。
 どうやら、マレウス・ドラコニアの作り出した夢の中ではネガティブな要素が排除される――つまり、すべてが上手くいってしまう、現実では甚だありえないことが起こるということらしい。現実ではケンカをしていたセベクと、私の夢の中では仲良しこよしだったことのも、きっとそれだろう。

「つまり、手応えがなさすぎるってこと?」
「そう。俺TUEEE展開って爽快感があるけど、連続しすぎるとダレてくる諸刃の剣なんだよね」
「ああ、なるほどね。フロイド先輩確かにそういうの嫌いそう」

 気分次第ではあるけれど、逆境にこそ燃えるタイプだよねえ。私の方がイデアさんやオルトよりフロイド先輩と関わりが深いはずなのに、そんなに簡単なことに気がつけなかったなんて、とやや悔しい気持ちを抱いた。
 フロイド先輩の難しいところは、すべてが「気分次第」であるところ。気分次第であるからこそフロイド先輩は、常日頃から世界を謳歌しているのだ。上手くいってもつまらない、上手くいかなくてもつまらないかと思えば、その逆も然りである。

「難しいですよねえ、フロイド先輩」
「ああ。試合でもアイツの投入タイミングには、バスケ部の監督も頭を悩ませている」
「でも最近ずっと機嫌良くないですか?」
「……それは君が特殊だからだろう」
「へへ、私のおかげだ」
「ハァ、こんなときまで……」

 以前、バスケ部の練習試合の応援に行かせてもらったときも、序盤のやる気のなさは酷いものだった。正直私は自分自身がフロイド先輩のご機嫌取りの道具として最適だと自覚しているのだけれど、その道具がいない空間ではそれはもう、手を焼くどころではないだろう。
 先程までフロイド先輩にとられていた態度は一度忘れ、現実でいつも見ているフロイド先輩の態度を思い出せば、いつもの調子は容易に戻ってきた。調子の良い私と、呆れるジャミルさん。そんな私たちを尻目に、シルバー先輩は透き通った声を発した。

「マレウス様の魔法領域の中では、幸せな夢を見るはずだが……今のフロイドは、まったく幸せそうには見えない」

 そう、シルバー先輩の言う通り、今のフロイド先輩は心底つまらなそうなのだ。それはもちろん、先程のイデアさんの言葉にあった。

「今回はマレウス氏(運営)の提供するシステムがフロイド氏(ユーザー)のプレイスタイルに合致していなかったパターンだ」

 フロイド先輩は想定外のことを常日頃から求めているタイプ。まさに夢のような、何もかもが思い通りな世界は飽きてしまって当然なのだ。せっかく夢の中にいるのにこうもつまらなそうなら、早くいつもの楽しい世界に引き戻してあげないと。
 私は夢の中で、シルバー先輩に現実とのギャップを知らしめられて醒めることができたけれど、おそらく醒め方も人によって異なるのだろう。こういうのはこれまで何人もの夢を渡り歩いてきた監督生にセベクやシルバー先輩、シュラウド兄弟に任せるのが良いだろう。
 シルバー先輩はその場で一瞬考え込む素振りを見せたあと、ハッと目を見開いた。

「とりあえず、強いショックを与えてみるのはどうだ?」
「シルバー、オメーのアイデア毎回それじゃねーか!」
「君、顔に似合わず案外荒っぽいんだな……」
「それがシルバー先輩のいいところでしょうが」
「その……すまない。ナマエにもフォローさせてしまって……」

 可哀想に、シルバー先輩が総ツッコミを受けている。尊敬する先輩の悪口は許しませんよ、と頬を膨らませると、シルバー先輩が申し訳なさそうに長い睫毛を伏せた。フォローじゃなくて本心です。
 すると今度はセベクが分厚い唇を迷いなく開いた。

「正直に『お前は今夢の世界にいる』と打ち明けてみるのはどうだろうか?」

 うーん、どうだろう。フロイド先輩にいきなり突拍子もないことを伝えるのは、いつもならば面白がってくれるかもしれない。しかしそれは相手が私であること、そしていつものフロイド先輩であることが条件だ。ましてや今の無気力なフロイド先輩にいきなり夢であることを伝えたところで、「は? 何言ってんの?」と一蹴される可能性も否定できない。
 どうやら同じ考えだったらしい、グリムが目を細めて疑わしげな表情を浮かべた。

「フロイドがそうあっさり信じるとは思えねぇんだゾ」
「私も同意。五分五分じゃない?」
「だが、ヤツはこの夢に飽き飽きしているのだろう。であれば、現実の世界にこそ魅力を感じる可能性はある」

 ねー、とグリムと顔を見合わせていたのもわずか、セベクの考えが論理的なものであったことに思わず挙手をする。

「それ、私も考えてた!」
「手のひらくるっくるなんだゾ……」

 いや、だって、「現実の世界にこそ魅力を感じる可能性がある」というのは私も考えていた。方法を思い浮かばなかっただけで、根底の考えは一緒だ。後出し? 寝返り? 結構です。
 セベクの考えにその場にいた皆が同意すると、その考え通りに動くことが決定したようだ。オルトがにっこりと目を細めると、こちらと先輩方に順に視線を配る。

「エペルさんやナマエさんのように、現実を突きつけるってことだね。なら……頼りになるのは上級生の先輩たちだ」

 よくよく考えれば、シルバー先輩たちは今まで何人もの夢を見てきたのだ。そうも合法的に夢の中を覗き見るなんて、プライバシーの侵害でしかないけれど、ユニーク魔法を持っていたのがシルバー先輩なのが救いだった。エペルの夢にも既に渡っただなんて、エペルは一体どんな夢を見ていたのだろう。
 ぼんやり考えていると、ぼやけた視界が次第にはっきりする。そんな中、一番に視界に映りこんだのは、オルトの無邪気な笑顔だった。え、なに?

「――それとナマエさんもだね! よろしくお願いしまーす!」
「ええ! 私も!? 存在すら覚えられているか怪しいのに」
「でも実際はここにいるメンバーの中で誰よりもフロイドさんとの関わりが深いはずだよ」

 まさか私も巻き込まれるなんて。着いてきてしまったからには仕方がないとはいえ、先輩方に混ざって、まだ現状に適応し始めたばかりの私がフロイド先輩に現実を突きつける、と。
 わかりやすくその場で狼狽えていると、シルバー先輩がオルトと私に向かってゆっくり頷いた。

「確かに、ナマエはフロイドと仲が良いな。ぜひ手伝ってもらえると助かる」
「シルバー先輩にそう言われてしまえば仕方がない……」
「思っていた以上に人たらしなんだな、君」
「それほどでも……」
「褒めているつもりはないんだが」

 まあ一人でやれと言われたわけじゃないし、頼れる先輩方も一緒みたいだし。頑張るね、とセベクやオルトに向けてガッツポーズをすると、セベクは頷き、オルトは同じようにガッツポーズを返してくれた。
 しゃぼん玉に包まれた私たちは、依然としてその場でそよいでいるフロイド先輩のもとに近づいた。

「フロイド、少しいいだろうか」
「あ〜? ナニ、クラゲちゃんたちまだいたのぉ?」

 やっぱりあの目線、少しも慣れない。石になってしまうのではないかと、つい身体が強ばるが、流石の先輩方は怖気付くことなく、課せられたミッションをこなすように言葉を紡いでいく。その間もフロイド先輩は海藻さながらだったが、シルバー先輩の言葉を最後まで聞くや否や、眉をひそめてこちらをじっと見た。

「今お前が見ている世界は、現実じゃない。すべてマレウス様が作り出した、夢の世界なんだ」
「……はぁ?」

 簡単にセベクの思う通りになるはずがなく、フロイド先輩は私たち一行を怪しい物売りだと勘違いしてくる始末だ。しかし、いきなりこんなことを言われて受け入れる方が難しい。
 今度はシルバー先輩が一歩引くと、頭を軽く抱えて溜息をついた。

「……ナマエに説得させた方が良かっただろうか」
「うーん……一理ある。でも私もそこまで上手く言える自信とかはないしそう簡単に上手くいくはずもないし……」
「俺がいってみよう」

 他の人たちの夢ではどうやって夢と現実の齟齬が生じたのかわからないけれど、私も何度も説得を重ねられてようやく夢から醒めることができたし、長期戦であることを予想した方が良いだろう。
 率直すぎるシルバー先輩では駄目だと思ったのか、ジャミルさんがバトンタッチするようにシルバー先輩の肩をぽんと叩くと、わざとらしく咳払いをした。

「突拍子もない話で驚いたと思うが……お前自身、少しこの世界に違和感を覚えているんじゃないか?」

 わあ、かしこい。ただ一心に夢だ夢だと語りかけるより、自分自身で夢の中の違和感に気づく方がこの状況を信じやすいはずだ。実際に私だってそうだった。
 より訝しげに眉根を寄せるフロイド先輩に、ジャミルさんは冷静に語りかける。しばらく私の出番はなさそうだ。

「お前はそんなに何でも負けなしの男じゃなかったはずだ」
「ああ。俺の記憶では、お前はナイトレイブンカレッジの入学式の日に既に敗北を経験している」

 何それ、気になる……。確かに今の二年生たち、一筋縄ではいかないというか、皆キャラが濃いもんなあ。シルバー先輩たちと横並びになっていた私は、あまりにもその話が気になって、一歩、二歩と後ずさりをしてしまった。
 どうやら昨年度の入学式は――昨年度の入学式も平穏に終わることはなかったようだ。突如の爆発音。それと同時に空中を舞うフロイド先輩。そしてそのフロイド先輩を飛ばした張本人であるリドル先輩。どうやらその原因はというと、初対面であるリドル先輩の髪を掴んだフロイド先輩が「赤いのに熱くない」と言った、と。

「リ、リドル先輩の髪を!?」
「なるほどねえ……」

 そりゃあ、人より気の短いリドル先輩が怒るのも当然だ。そしてリドル先輩がやけにフロイド先輩を避けたがるのも腑に落ちた。それにフロイド先輩の考えは、やっぱり理解しがたい。
 シルバー先輩とジャミルさんが入学式の話をするのを、フロイド先輩は先程までの無気力さとは打って変わって、わずかではあるけれど身を乗り出して聞いていたようだった。そしてけたけた笑うと、口角をつり上げたままゆっくり言葉を発した。

「へー、なにそれウケんね。作り話なんだろーけど、退屈な入学式よりそっちのが面白そ…………うっ!?」

 ――すると、愉しそうな表情は一変。頭を勢いよく押さえると、表情を強ばらせた。ぐにゃりと空間が歪む。さっきまでの私と、同じだ。

「なんだこれ……頭が、痛ぇっ!」

 フロイド先輩が、夢から醒めかかっている。フロイド先輩が現実に面白みを感じたことによって、夢が崩壊しようとしている。私たちは顔を見合せた。あとひと押しだ。
 要領を得たことにより、私にもフロイド先輩を夢から醒めさせる助力ができそうだ。どのエピソードを出そうか、頭をフル回転させていると、私より先にタブレット端末が音を発した。
 イデアさんによると、三年生との合同授業でケイトさんと当たり、ボコボコにされ――それに懲りることなく、レオナさんや、あのマレウス・ドラコニアにすらも挑んではボコボコにされた、と。

「あはっ、嘘でしょ。考えらんない」
「笑ってないでナマエ氏も何かエピソードオナシャス!」
「ええ、そうだなあ」

 ジャミルさんによるバスケ部エピソードに区切りがつくと、今度は監督生とグリムのターンだった。昨年の期末テストのあの件は、私やフロイド先輩よりアズール寮長が酷だったよねえ。
 連続で現実の出来事を突きつけられ、現実とのギャップを明確に感じ始めたのだろう。フロイド先輩は苦しそうな表情を浮かべつつもどこか愉しそうに、手のひらを額に置いた。イデアさんに押されるがまま、今度は私が挙手をした。

「あんまり言いたくないんですけど……」
「っ、はぁ……? なにっ……、まだなんかあんの?」
「……私がめちゃくちゃフロイド先輩のことを避けてたの、覚えてます?」

 この関係性に名前をつけたくて、でもこの心地良さが壊れてしまいそうで、たくさんの人に迷惑をかけて、たくさんの人に助けてもらった。そのおかげで、名前なんてつけなくても、すべての出会いや関係はそんなに単純なものじゃないんだって気がついた。
 小さく呻き声を上げながらも、フロイド先輩は真っ直ぐに私の話を聞いてくれている。この夢で初めて、フロイド先輩に出会えたような気がした。

「あのときは私も整理がつかなくて、フロイド先輩のこと悲しませちゃった」
「うぐっ……はあっ、……はは、あんときすっげぇ傷ついたんだぜ」
「ごめんね、フロイド先輩。ごめんなさい」

 未熟で自分勝手な私のせいで、自ら危険な目に遭って、助けてもらって、本当にごめんなさい。本当に、ありがとう。
 フロイド先輩を夢から目醒めさせるのが目的だったのに、まるであの日々を私が消化したがっているようだ。いつもと同じ、金色の瞳が私だけを捉えている。薄い膜一枚を隔て、頭を深々と下げると、やがて頭上から息が落ちてきた。

「うっ、は、……いいよ、ナマエちゃん」

 悲痛ながらも、聞き慣れた穏やかな声が私を呼んだ。私、ちゃんとフロイド先輩の中に存在してたんだ。刹那、空間がよりいっそう歪み始め、安堵感が一気に押し寄せた。きっともう、夢から醒めてくれる。
 しかし、それと同時に辺りに黒いインクのようなものが溢れ出した。私の夢でも見覚えがある。これは――

「現れたな! 『闇』め!」

 どろどろとした液体が、重力に逆らって何かを形作っていた。私たちより大きく、フロイド先輩くらいの背丈。『闇』が何を作ろうとしているのか、考えるより先に、それらは姿を現した。

「こんなところにいたんですね、捜しましたよフロイド」
「話は聞かせてもらいました。やれやれ、嘘をつくにしたってもっとまともな嘘をついてほしいものだ」

 そう言ったのはジェイド副寮長と、アズール寮長。の、形をまるきり写した『闇』だった。呑気にも、寮長の人魚姿は初めて見るものだと興味を引かれた。タコ型の人魚だなんて珍しいのに、寮長が人魚姿を嫌がるほどの容姿ではない。むしろ、幻想的な美しさほどあった。
 もちろんそれどころではない状況ではあるけれど、私は『闇』から甘い言葉を受けるフロイド先輩をただその場で見ていた。するとセベクが悔しそうに息を漏らした。

「くっ……フロイド先輩が闇の言葉に呑まれぬようまた声をかけねば」

『闇』の寮長たちが、フロイド先輩の左右から甘言を弄する。フロイド先輩を助けようと、ディアソムニアコンビやオルトが戦闘態勢に入るように身を構えた。けれどあの寮長たち、なんというか、絶妙に気味が悪い。寮長たちを少しでも知っている人ならば即座に違和感を抱くような、いつもと比にならない胡散臭さ。
 セベクの袖を引っ張って引き止めると、セベクは怪訝な表情をこちらに向けた。

「いや、多分ね、その必要はないよ」
「なに?」
「だってあの寮長たち、変だし」
「ああ、同感だ」
「しかし……」
「一旦見守っていよう?」

 ジャミルさんや私ですら気がつく違和感に、フロイド先輩が気がつかないはずがない。フロイド先輩は、気分屋だけど私よりもずっと頭が良くて冷静だ。夢の中で闇に嵌められそうになっていた私とは、きっと違う。
 私の言葉を受けたセベクたちは、その場でじっとしてフロイド先輩たちにじっと視線を集めた。すると、私の予想は的中した。

「そんなつまんねぇこと、お前らは絶対に言わねぇだろ!!」

 そう言って彼は『闇』を一蹴した。やっぱり、流石は私の尊敬するフロイド先輩だ。
 フロイド先輩はぎり、と歯ぎしりをすると鋭い視線を『闇』に向け、憎しみと苦しさが混ざったような声を絞り出した。

「誰だよ、テメェら……その顔で、その声で、気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよ……あ、ああァッ!」

 空間が歪む。フロイド先輩が強く苦しみ始める。もう少しだ、もう少し。水中に、フロイド先輩の叫び声が響き渡る。頑張って、頑張って。

 やがてフロイド先輩の表情は憑き物が落ちたような、いつもと同じ表情へと変わっていた。フロイド先輩な、夢から醒めた。やっと、会えた。
 自ら『闇』から逃れたのはフロイド先輩が初めてだったのだろうか、セベクやシルバー先輩がかっと目を見開いていた。ほら、私の言う通りだった。
 フロイド先輩は左手で右の首筋を掴むと、本当に逆鱗に触れたときのあの表情――瞳を鈍く光らせては『闇』の方へ近づくように尾びれを揺らした。

「本物のジェイドだったら、オレの失敗談とか全部聞き出そうとするし……いくらアズールが息するみたいに嘘つくヤツでも、陸がつまんねーとか、三人でずっと一緒にとか……絶対に言わねぇわ!!」

 フロイド先輩の思い描く二人の姿は、私なんかよりもずっと解像度が高い。フロイド先輩が、あんなに気持ちの悪い甘言に耳を貸すはずがないのだ。
 今、彼の視界にきっと私たちは映っていない。彼の怒りは、ただただ大事な幼馴染に成りすました『闇』へと向いていた。

「乗り気じゃないなら、ついて来れないなら……構わず置いていく。それがオレらのルールなんだよ」

 そうだ。それがオクタヴィネル寮の幹部であり幼馴染三人の信頼の形。綺麗事や絵空事でできた人間関係とはまるで違う。私の夢の中とは違い、きっと、フロイド先輩一人で方をつけるだろう。
 フロイド先輩はマジカルペンなんて構えることなく、ただその場で渦を巻くように尾をたなびかせた。それにしたって――

「難破船の隣に沈めてやるよ!!」

 あんなに機嫌の悪いフロイド先輩を見るのは初めてだ。眼光が鋭い。ギザギザの歯がいつもより凶暴に覗いている。あんなのと戦ったら、食われる。先輩たちの背中に隠れて、ただ固唾を飲んで、行く末を見守ることしかできなかった。
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