13 きらきらひかる〈1〉
とある日曜日、コンサート後にウィリアムとその両親に久しぶりに会う為にあるコンサートホールで待ち合わせをしていたときだった。
ウィリアムとは合流して、あとはウィリアムの両親待ち。その両親が行きたいレストランがドレスコードのあるお店だというので、指定通りにきちんとしたワンピースに足元にはパンプスを。久しぶりの格好になんだか首元がスースーする気がした。
そして無意識のうちにネックレスに触れればチェーンがチャリと音を立てる。
「それはじめてみた。似合ってるよ」
「あ、ありがとう」
そのとき身につけていたアクセサリーを目ざとく見つけて褒めるのは流石ウィリアムらしいというか、なんというか。そんなウィリアムの視線はわたしの首元にあるネックレスに注がれていた。
「めずらしいね」
まなみがアクセサリーなんて、と言って優しく微笑む。
下校前、教室で帰る準備をしていたら桃矢君がこの日曜日に予定は入っていないかと声をかけてくれた。お出かけか何かのお誘いだろうか。
けれどバイトは、と思っていたら桃矢君自らこの日曜日はたまたま休みなのだと言う。なんだかめずらしい。
「…どこか行きたいところでもあるの?」
「いや別に」
大学にいくお金を貯めるために休みの日はほとんどバイトをしている桃矢君。
めずらしいお休み。どこか行きたいところでもあるのかと思って聞いてみたけれど、どうやらそういう訳ではないらしい。
「デートは嫌か?」とわたしの目を見て意地悪そうに笑う桃矢君はいつも通りの様子。いつもの桃矢君と何かが違うような気がしたのはわたしの思い違いかもしれない、そう思った。
「ううん、嬉しいよ。ありがとう」
久しぶりのデートだった。
いつも学校で会っているからか、休みの日にふたりきりで会うことは少ない。奈々ちゃんと景子には休みの日にも会いたいってアピールしなさい!と言われているけれど、どうしてもそれを言う気にはなれなかった。わたしはひとりの時間も好きだし、桃矢君は大切なバイトがあるし、それで休みの日はお互いに充実しているのだ。
お前はどっか行きたいところないのか、と聞かれてすぐには思いつかなくて一瞬黙ってしまう。どこか、行きたいところかぁ……。
「特に無いならおれん家こいよ」
「いいの?」
「ああ」
さっきの数学で沢山宿題もでたところだし勉強会でもするかと桃矢君は週末の予定を決めていく。勉強会なら月城君もいっしょに、人数が多いほうがいいんじゃないかとわたしは声をあげた。
「じゃあ月城君にも声かけて、」
「あいつ日曜は弓道部の助っ人で来れねえから」
ほんの数時間前に本人からその話を聞かされていたのに、すっかりその予定を忘れていたわたしをみて少しだけ笑う桃矢君。
「だからさいしょに言ったろ、デートだって」
「そ、そうだった」
3人でいることの方が多いしそれが当たり前の習慣になっているから、月城君を誘うことに何の違和感も感じていなかったわたしが悪い。わざわざ桃矢君がデートだと宣言してくれていたのに。
「10時、アパートまで迎えに行くから」
「ありがとう」
楽しみな予定が増えたことに喜びながら、机の中の教科書やノートを鞄にしまっていく。久しぶりだからちゃんとしたお洋服を着ていこうとタンスの中身を想像した。
「ただいま」
「おかえりなさい」
そうしている間にも日直の仕事のために席を外していた月城君が戻ってきた。するとわたしの顔をじーっとみつめて、ふむ、と何かに納得したようなしぐさをする。
「嬉しくなるようなこと、あった?」
「……顔にでてる……?」
「まなみじゃなくてうしろにいるとーやがね」
わかりやすいなー、と月城君が楽しそうに小さくくすくすと笑った。
「……日曜、お前弓道部の助っ人だろ?だから」
「わかった!デートでしょ」
「声が大きい」
隠すのも変だと月城君に予定を話すと、今度こそ本当に納得したと言って桃矢君の表情のことを指摘した。月城君の下校の準備を待ちながら、桃矢君は月城君に声のボリュームを下げるようにとお願いをする。
「……顔みておれの考えてることがわかんのはゆきと父さんぐらいだよ……」
「そうなの?結構わかりやすいのに」
まなみもわかるでしょ、と月城君は言うけれど正直わたしはそこまで桃矢君の考えていることがわかるわけじゃない。現に月城君に力をあげる事は桃矢君に話してもらうまで全然わからなかったし。
あ、でもさくらちゃんのことを考えてるときだけはわかりやすいかもしれない。シスコンと月城君に言われるくらいさくらちゃんのことを考えているときは顔によくでているから。そう桃矢君に伝えればムッとしてしまう桃矢君に、共感してくれる月城君。
「だって、とーや」
「…………」
月城君の下校の準備ができた合図とともに教室をあとにして、廊下を歩きだしたわたしと月城君。そのすぐ後ろを歩いている桃矢君はまだちょっとだけ不機嫌そうにしている。
わたしは久しぶりにそんな桃矢君の姿をかわいい、なんて思った。