07 思ってたよりきみを意識してた〈2〉
「おいしい!」
「ほんと、おいしいね」
ゆきとまなみがさくらの作ったホットケーキを食べて、また仲よさそうにしゃべっている。
いや、別に2人は何も悪いことはしていないのに、仲間外れにされたような気がしておれが勝手に気分を悪くしただけだ。
「さくらちゃんにお礼しないと」
「何するの」
「かき氷のおいしいお店があるんだ。そこにしようかな」
「かき氷?」
「イチゴミルク、すんごくおいしいんだよ」
「へぇ……いいなあ」
まなみはゆきの話を聞きながら目を輝かせていた。こいつイチゴミルクが好きなのか?
「ねぇ月城君、お店の場所教えてくれる?」
「もちろん、えっと……」
おれはホットケーキを食べ終わってまた勉強にとりかかっていた。
何がおもしろいのか、ゆきはくすっと笑ってからおれに話をふってきた。
「ふたりで行ってきたら?ね、とーやもいっしょに」
「はあ?」
何を言い出すのかと思えば、いっしょにかき氷を食べてくるなんて、そんなものお店に入るだけで恥ずかしすぎる。
「桃矢君イチゴミルク好きなの?いっしょに行く?」
「おれはいい」
「、そう……」
まなみは一瞬残念そうな顔をしたが、すぐにノートを開いて宿題にとりかかっていた。
ゆきも気づけば静かに宿題にとりかかっている。
まなみはたまにゆきに問題の質問をしては、黙って問題を解いていた。
声は出てないがうーん、とかえーっと、とか口を動かしてるのが面白いと思った。
そして時間が経って、またちらっとまなみの様子を見ようと顔をあげたとき、同じように顔をあげたまなみと目が合った。
「……?」
「…………っ」
にこりと笑って、何?とたずねるように首を少し傾かせるまなみに、一瞬目を奪われてしまった。
なんだかこっ恥ずかしくなって、おれはさっと顔を背けた。
そのとき少し動揺していたのをゆきに気づかれたのか、ゆきはまた隣でくすくすと笑いやがった。
それからまなみは不思議そうな顔をした後、また視線をノートにもどしていた。
「お邪魔しました」
宿題も一段落していい時間になり、おれはゆきとまなみをおくってそのままバイトに行こうと服を着替えた。
先にゆきの家に着いて、次にまなみをおくって行こうとまなみの住むアパートがある方向へ自転車のハンドルをきろうとした瞬間、まなみはアパートとは違う方向に自転車を進めようとした。
「おい、こっちじゃねぇのか」
そう聞くと、何か思い出したみたいにこちらを向くまなみ。
「今からイチゴミルク食べに行こうと思って!ここまででいいよ、桃矢君」
「イチゴミルク?」
そんなにイチゴミルクが食べたかったのかと思って少しあきれたが、楽しそうに笑ってるまなみを見てそんな思いはすぐふっとんだ。
「おれも行く」
別にイチゴミルクが食べたいわけじゃないが、もう少しまなみといたいと思わず声をかけてしまったのだ。
「イチゴミルク、嫌いじゃなかったの?」
「別に嫌いとはいってねぇだろ」
「ならよかった、じゃあ、いっしょに行こう?」
楽しそうにおれの自転車の前をいくとずんずん進んでいく。
「さっき宿題してたとき、桃矢君イチゴミルクが嫌いなのかと思っちゃった」
「?」
「いっしょに行かないっていったから……わたしの勘違いだったのね」
まなみがそう言ってすぐ、ゆきに教えてもらった店に着いた。
着いてすぐ、バイトの時間は大丈夫なのかと聞いてきたが、まだバイトまで時間はじゅうぶんにあるから大丈夫だと返した。
店は閉店前だったのか客が少なめで、待たずにイチゴミルクを買うことができた。
まなみはテーブルにはつかずにそのまま帰るというと、嬉しそうにイチゴミルクをほうばっている。
はじめは緊張していて心を開いてくれなかったが、今じゃだいぶと距離が縮まったような気がしていた。
おれと同じように力をもっていて、ゆきのことに気づいていて、さくらのやっていることも知ってる。
普段、こういう人種との出会いは無いに等しい。
だからこそ親しくなれてほんとに嬉しいと思っていた。
まなみがどう思ってるのかは知らないが。
ぼーっとしてたおれに気づいたのかまなみがおれの顔を少しのぞきこむようにした。
「どうかした?」
「……ちょっと考え事」
思ってたより
きみを意識してた
(まなみ、おまえにみとれてたんだ)
(考え事ってなんだろう)