家に帰るとわたしはすぐに服を着替えて、またペンギン大王公園に向かった。
前にクロウカードが学校に現れたとき、さくらちゃんはその日の夜に学校にきていた。
きっと今日さくらちゃんはペンギン大王公園にくるはずと思ったから。
本当は少しわくわくしていた。
いままでだったら幽霊みたいに不思議なものがみえるのが嫌だったのに、どうしてなのかクロウカードには興味がわいていた。
わたしは目にみえないものは信じない。
幽霊は昔から見えるから信じているけど、魔法なんてあったらいいな、くらいでまったく信じられなかった。
でもそんなわたしはこの目であの鳥をみた。
公園の池でみたおっきなカレーライスだってきっと鳥と同じように、正体はクロウカードだと思う。
それに歌帆がうそをつくはずがない。
さくらちゃん達の気配を感じて、わたしは気づかれないように近くの木に身を隠した。
前みたときにはわからなかったオレンジいろのぬいぐるみみたいなものが、さくらちゃんのまわりを飛んでいた。
小さな体に羽がはえてるし、何かしゃべってるみたい。
そのぬいぐるみからはなんとなく力を感じた。クロウカードに関わりのある何かだと思う。
あれもクロウカードのひとつなのか、そんなふうに考えをめぐらせていたら、さくらちゃんは一枚のカードをとりだした。
「
さくらちゃんが叫んだのと同時に、まるで人と同じ身体の女の子みたいなのが現れ、水がさくらちゃんを守るように包みこんだ。
そして真剣な顔をしたさくらちゃんは、そのまま池の中へ入っていった。
お友達はてすりにつかまって身をのりだすようにしてビデオを撮っている。
しばらく何も起きないと思ったら、お友達とオレンジいろのぬいぐるみが少し慌てながら話していた。
「さくら!」
オレンジいろのぬいぐるみが池に飛びこもうとしたら、電気みたいなものにさえぎられてふらふらと倒れてしまった。
いったい、池の中で何が起こっているのかわからなかった。
でも今さくらちゃんの身が危険だと感じるのにそう時間はかからず、思ったときにはもう自分のからだが池のある方向へと走りだしていた。
池の水の中に飛びこんだわたしはさくらちゃんを抱えこんだ。
「まなみ!」
「……っ!」
急に聞き覚えのある声がきこえたから上をみると、そこには月城君がたっていた。
月城君もこの状態を理解したのかすぐに飛びこもうとしたけれど、それはなんとかやめさせた。
「月城君はそのまま!とりあえずさくらちゃんを!」
「わかった!」
わたしは抱えていたさくらちゃんを月城君にたくすと、少し口にふくんでしまった池の水をはきだした。
「ゲホ…ゲホッ……ッ……!」
「だいじょうぶですか?!お怪我は?」
「わたしはだいじょうぶよっ……さくらちゃんは?」
「とりあえずぼくの家に!ここからなら一番近いから!」
さくらちゃんは意識がないみたいで、いくら声をかけても返事をしなかった。
「ちょうどいいのあった?」
「うん、ありがとう」
お友達には先に帰ってもらってから急いで月城君の家にくると、さくらちゃんを布団に横にさせておいた。
まだ目はさめていないみたい。
わたしはびしょ濡れのままだったから、月城君が家のお風呂をかしてくれた。
月城君には服もかしてもらってなんだか申し訳なかったけど、今は何よりさくらちゃんが心配でしかたがなかった。
「お家に連絡は?」
「さっき電話した。桃矢が迎えにくるって」
桃矢君が迎えにくるときいて安心したわたしは、急にからだに疲労を感じた。
「痛っ……」
わたしはさっきさくらちゃんを助けたとき、右足をくじいていた。
月城君の家にくるまではさくらちゃんを助けようと必死だったからだいじょうぶだったけど、今は普通に痛む。
とりあえず軽い処置はしておいた。
「まなみこそ足はだいじょうぶ?」
「うん、だいじょうぶ……かな」
月城君はいかにも心配そうな表情でわたしの足を気遣ってくれた。
「さくらちゃんは?」
「まだ寝てる。でも、だいじょうぶそうだよ」
「そう、よかった……」
「それにしてもびっくりだったよ、池の中にまなみとさくらちゃんがいるなんて」
「あっ、その、……夜食をかいにいく途中で、ね」
わたしは話をごまかして、月城君といっしょに、さくらちゃんが寝ている部屋に向かった。