12 ずっと気になってた!〈2〉
「知世」
ちょうど桃矢君達とお父さんが席をはずしていたときだった。
「お母様!」
知世ちゃんの嬉しそうな声とともに、少し前に会ったばかりの園美さんが4人のボディーガードをつれてやってきた。
むこうもわたしに気がついたのか、目線でお互いに「こんにちは」と挨拶をする。
「さくらちゃん、ご紹介しますわ。母です」
すると園美さんは目をきらきらさせてさくらちゃんを見つめていた。
「あ、ごめんなさい」
気をとりもどしたのかふっと微笑んだ。
「大道寺園美です。いつも知世と仲良くしてくださってありがとう」
「い、いえ、わたしがいっつもお世話になってて……」
さくらちゃんは緊張してるのか何度もペコペコと頭をさげている。
そして特に反応がないわたしに気づいたのか不思議そうにたずねた。
「まなみさんとお知り合いなんですか?」
「ええそうよ、まなみとは昔からの知り合いなの」
さくらちゃんが「そうなんですか!」と振りかえってわたしを見たから笑ってかえした。
「ほんとうに可愛い子ね」
園美さんはさくらちゃんをみながらうっとりしている。
「わたしの知ってる子によく似てる」
「知世からあなたのことよくお聞きしてたんだけど、名字はまだ知らないのよ。教えてくださる?」
「えっと、きの……「知世さんのお母さんいらっしゃったかい?」
そこにゴミ捨てからかえってきた藤隆さんが園美さんの後ろ姿を見てそういった。
「お父さん!」
「あああああああっ!」
突然の悲鳴のような大きな声に、まわりにいた人すべてが園美さんを振り返った。
わたしもこんなに取り乱している園美さんははじめて見た。
そして園美さんも、驚きか何かで固まってしまっていた。
「木之本先生!」
「園美くん、」
わたしは取り乱している園美さんを見て、これまでおしとやかで素敵なお姉さんのイメージを再構築していた。
その後2人はその場を離れて話をしにいっていた。
「お父さんと知世ちゃんのお母さんって知り合いだったんだね」
桃矢君は何か事情を知っているのか、うーんっと考えこんでいる。
アナウンスがはいってすぐ藤隆さんが走ってかえってきた。
「お父さん出るんだよね」
「おれいこうか?」
「だいじょうぶだよ。それに園美さんにぜったい出るようにいわれたからね」
さっきまでいったい何を園美さんと話していたのか、絶対出ろなんて変な話だ。
「入場門どこかな?」
「こっちだよ」
月城君はちょっと不思議そうな顔をすると、いまだに何か考えこんでいる桃矢君に口をひらいた。
「わけ聞いたほうがいい?黙ってたほうがいい?」
「園美さんはむかし天宮園美さんっつって……」
「あれ?天宮って…たしかとーやのお母さんの旧姓、」
「いとこ、だったんだよね」
急にわたしが話したのにびっくりしたのか桃矢君は少しだけ目を見開いた。
「何で知ってたんだ」
「あ、言ってなかったよね……わたし園美さんと知り合いなの」
桃矢君はちょっと複雑そうな顔をしたのでわたしは慌てて説明をした。
誰だって他人に自分の家庭の事情を何かと知られていたらあんまりいい気はしないだろうから。
「だいじょうぶだよ、詳しいことは知らないから!撫子さんのことだって知ったのは最近だし、」
それから桃矢君は他にも色々説明してくれた。
「園美さんはちっちぇえころから母さんを可愛がってて、2人の結婚を一番反対してたらしい」
「だから藤隆さんにあんな対応するんだね」
「でも、とーやの家にある撫子さんの写真は、雑誌に載ったのじゃなくてもいつも幸せそうだけどね」
そうだ、わたしはさくらちゃんにみせてもらった撫子さんの幸せそうな写真をみて、むかし園美さんにみせてもらったあの写真のことを思いだしたんだ。
「……しかし、すごい花だな」
ずっと気になってた!
(桃矢君、これクロウカードだよね)
(まあいいんじゃねーか、悪いもんじゃなさそうだし)
(……たしかに……)