14 まだ、まだ、まだ、〈1〉




「月城君、まだぶたまんある?」
「うん!こっちのピザまんとカレーまんも買っていこう」

 わたしはぶたまんを買おうと月城君といっしょに売店にきていた。
 運よくいつも人気ですぐなくなるぶたまんと、そのほかにもピザまんとカレーまんをたくさん買えた。

「よしっ、桃矢のところにいこっか!」
「はやくいかなきゃ冷めちゃうもんね、ダッシュ!」

 急いでお金を払って桃矢君のいるところに向かった。
 桃矢君はここへくるほんのちょっと前に、さくらちゃんに何か用事があるのかグラウンドにいくといっていた。

 ものすごい速さで走る月城君についていくのは結構つらい。
 きっと本人は無意識なんだろうけど、月城君の走る速さは相当速い。
 自分からダッシュと言っておいてなんだけど、ついていくだけで精一杯だった。

「ぶたまんあったよーっ!」

 いく先に桃矢君をみつけたから月城君は大きな声でさけんだ。
 桃矢君のまわりにはさくらちゃんと知世ちゃんと、あと見なれない男の子がいた。

「ついさっき売店にいってきたの」
「あのね、ぶたまんあったよ!あとピザまんとカレーまんと」

 何だかわからないけど桃矢君達はあんまりいい雰囲気じゃなかった。
 というよりどうして桃矢君と男の子がファイティングポーズをしてるのか気になる。

 月城君は何も気にせず笑顔でしゃべっていたけど、やっとその場の状況に気づいたのか目をぱちくりさせているみたいだった。

「……みんなも食べる?」

 誰がみても普通じゃなさそうなその雰囲気のなか、月城君はいつも通りの口調でみんなにそう話しかけた。
 みんなは急のことになんとなく苦笑いでかえしていた。
 そして月城君は一人、見なれない男の子にぶたまんをさしだした。

 するとつぎの瞬間、その男の子は顔を真っ赤にして走りさっていった。

「……ん?ぶたまん、いらないのかな?」
「ぶたまんは関係ないと思うけど……」
「んだあのガキ」

 理由はわからないけれど、とりあえず桃矢君はイライラしているみたいだった。
 その近くでさくらちゃんが知世ちゃんに支えられて立っているのをみるかぎり、何かあったのには違いない。
 なにしろ桃矢君と男の子がいまにも喧嘩をはじめそうなポーズをとっていたわけだから。
 いったい何があったんだろう。
 そのすぐあと、さっき買ったばかりのぶたまんを食べながら、あの男の子のことについて話していた。

「あのガキ……」
「まあ、とーや。落ち着いて」
「おれは落ち着いてる」
「はいはい、」

 桃矢君はあいかわらず不機嫌そうに眉間にしわをよせている。
 それを月城君がなだめていた。

 さくらちゃんにさっきの男の子についてきけば、転校生だといっていた。きょう会ったばっかりなのに暴力なんて。

「李小狼君、だったっけ?」
「ああ。香港から来たとかいってたな」

 こんな時期に転校してくるなんて、きっと家庭の事情かそれとも何か目的があってこの友枝にやってきたとしか思えない。

 そんなことを考えながら、わたしはふたつめのぶたまんに手をのばした。