「きょうバイト休みなんだって?」
「なんか知らんけど商店街の電灯がショートしてたいへんだったらしい」
何を隠そう、きょうはバレンタインデー。
月城君が李君に呼び出されたというので、わたしと桃矢君はその待ち合わせ場所にいっしょについてきていた。
なぜ商店街の電灯がショートしてしまったのか知ってるだけにちょっと苦笑い。
でもその苦笑いでどうやら桃矢君にはすべてわかってしまったみたいで、桃矢君はいつもみたいに目つきを悪くさせた。
「とーや日直だろ?まなみも、だいじょうぶだよ、ぼく一人で」
「あのガキなにしでかすかわからん」
「しでかすって桃矢君、」
「俺のバイト先の菓子屋に来て俺の顔見るなり帰りやがった、おまけにさくらにつきまといやがって」
桃矢君はまだ包帯がまかれている右手でこぶしをつくって何かまだぶつぶつとつぶやいていた。
まあ妹思いの桃矢君だから当たり前かもしれないけど、これは完全なるシスターコンプレックスだ。
「ね、どーしてぼくはさくらちゃんと話してもいいの?」
急に月城君がいったことに、桃矢君だけじゃなくわたしも驚いた。
「おまえは……」
月城君は桃矢君にとって、家族とおんなじように大切な存在。
ある意味恋人以上の友情関係の月城君を少しうらやましいなと思ってる。
それと同時に、月城君が普通の人間じゃないとわかっていても他の人と同じように接している桃矢君の優しさにわたしは感動していた。
そんなとき、すごく優しい雰囲気につつまれた中にものすごい轟音がきこえてきた。
「ついてくるな!」
「わたしもこっちに用があるんだもん!」
それはものすごい速さで走ってくるさくらちゃんと李小狼君だった。
ちょうどフェンスの前までくると立ち止まり、2人とも肩で息をしていた。
そしてかわいらしい小包を月城君にさしだした。
「これ、ぼくに?」
さくらちゃんと李君は同時に大きくうなずいた。
「ありがとう」
月城君の感謝の言葉に2人は顔を真っ赤にさせた。
あまりにも急な出来事に、わたしは一瞬何がなんだかわからなくなっていたけど、きょうが何の日だったかを再確認して納得した。