19 好きだよ、君が〈2〉
「知世ちゃんは先に帰ったんだって」
「そうだったんだ」
あれから数時間たって、ぼく達は帰り道を歩いていた。
きょう最初にまなみに会った瞬間から、ぼくはまなみから何ともいえないあったかい雰囲気を感じていた。
夕べ桃矢が怪我したって電話で聞いて、心配でたまらなくて正直きのうは眠れなかった。
きっとまなみも心配で寝れてないんだろうなんて思いながらぼくの心は不安定なまま朝がきて、元気なんて出ないまま学校へ行くためにいつもの待ち合わせ場所に向かった。
きっと辛そうな顔をしてるまなみを励まそう、それから放課後にいっしょにお見舞いに行こうって言おう、そう思いながら歩いていたらあっという間に待ち合わせ場所に着いた。
そしたら先にそこにいたまなみの顔はなぜかすっきりとしていて。
「おはよう、月城君」
そうやってぼくに笑いかけた。
その瞬間、不安でいっぱいだったぼくの心はあったかい何かで満たされた。
まるで「大丈夫だよ、安心して」って言われてるみたいで、ああ、桃矢は本当に大丈夫なんだって根拠もなしに思った。
ぼくはそんなまなみの表情をみて察した。
放課後、桃矢の顔をみたらそれがすべて確信にかわった。
優しい桃矢のことだからこんなとき普通なら、心配をかけちゃって申し訳なさそうな表情をする。
いままでの桃矢なら、辛そうな、そんな表情をするに決まってた。
そういう顔をしてなかったのはまなみのおかげだ。
そしてお互いを心配そうに、愛おしそうに見つめるふたりにこっちが恥ずかしくなった。
いたずらしてやろうと思って、「まなみ、先にとーやん家きたでしょ」って言ってみたらまなみだけじゃなくて桃矢までびっくりしてたのが面白かった。
はやく2人とも素直になってよって言いたいのはやまやまだったけれど、ここは2人のペースにまかせようと思う。
恋とかそんなのじゃなくて、ぼくはまなみのことが好きだ。
ぼくはいつもまなみに支えられてる。だからぼくもまなみを支えたい。
ぼくにとって大切な、かけがえのない存在のとーや。
ぼくはいつも桃矢に支えられてる。だからぼくも桃矢を支えたい。
とーやにはまなみが必要でまなみにもとーやが必要だと思う。
この2人はよく似てるから、知り合ってこんなに短い間でもすごくお互いのことを理解して想い合ってるんだ。
似てるのはもちろん見た目の話じゃなくて、心と、もっと内面と、気持ちの話。
それでそんなぼくの大切な2人が幸せそうにしてるとぼくが幸せになれるんだよ。
そして帰り道を歩きながらきょう1日を振り返る。
2人で話している時の桃矢とまなみはまるで恋人同士みたいだった。
いつもならいまここでまなみをからかったりしたいところだけど、今はやめておくことにした。
そこできょう何度目かの「先にとーやに会ってたなんて」っていう台詞を言った。
「どうしても心配で、衝動的に……ね?」
そうしたら少し恥ずかしそうに、まなみはぼくに笑いかけた。
好きだよ、君が
(この笑顔に助けられるんだ)