20 『かもしれない』、なんて嘘〈1〉




 わたしは久しぶりに内容がはっきりとした夢をみた。
 『月峰神社』っていう神社で歌帆とお話しをしている夢。

 夢に歌帆が出てくるときは近いうちに何かが起こるっていう前触れだから、朝目覚めた瞬間わたしはベッドから飛び起きた。

 お天気に恵まれた日曜日に、わたしは何かに導かれるようにして家を出た。
 わたしは目的地も決まらないままに歩いていた。
 でもきっと『月峰神社』に向かっているんだろうな、と思った。
 どこにあるのかもわからない月峰神社を目指してわたしは歩いているんだ、本能のままに、そう確信した。

 そうやって歩いているうちに、わたしの目の前には鳥居が現れた。

「こんなに近いところにあったんだ……」

 歩いて二十分くらいのところにあったのに、いままで全く気づかなかった。
 歌帆が出てきた夢に出てきたくらいだから不思議な力のある神社なんだろうか。

 鳥居をくぐってから、初めて月峰神社に来たにもかかわらず、まるで吸い込まれるように歩いていく。
 すると神殿とは少し離れた一角に橋を渡って小さな島があるのがわかった。
 その島には屋根があって休憩のできるような場所があった。
 そこにはわたしが待ち望んでいた、本当に会いたかった女の人が立っていた。

「久しぶりね、まなみ」

 彼女はにこりと微笑むとこっちにくるよう手招きをした。
 わたしはまた吸い込まれるように彼女の隣まで歩いた。

「歌帆……!」

 嬉しさのあまり歌帆に抱きつくと彼女は微笑みながら抱きしめかえしてくれた。

「まなみったら見ない間にまた綺麗になったんじゃない?恋人でも出来たの?」
「まさか、」

 普段恋の話なんてしないわたしも、歌帆の前では何でも話せてしまえそうで、胸が高鳴っていた。

「歌帆に聞きたいことがあるの……クロウカードのこととか、他にもたくさん……」
「わたしも、貴女に話したいことがたくさんあるわ。だからちょっと場所を変えましょう?」

 何も面白いことを言っているわけじゃないのに、お互いの顔をみているだけで思わず笑ってしまう。
 それくらい歌帆に会えたことが嬉しかったし、彼女も同じように思ってくれているはず。
 そしてわたし達はすぐにその場をあとにした。