02 もう、友達〈2〉
近くの席の女の子に次は体育だから一緒に行こうと言われた。
グラウンドには女の子達の黄色い声援が響いている。
そういうのには疎いわたしでも、さっき会ったばかりの彼らが、特別な人気者だということがありありと伝わった。
同じように隣で興奮している子と、更衣室からグラウンドに向かう途中、同じクラスの女の子から話を聞いた。
「木之本君達と知り合い?」
「いいえ、今日学校に来るのに迷子になっちゃって、偶然道を教えてくれたのが月城君だったの」
近くにいた数人の子が、「じゃあ、あの辺りに引っ越してきたんだ」と言っていた。
「それにしても木之本君と月城君と話したなんて羨ましいなー」
「どうして?」
「あのふたり、学校一の人気者なんだから」
みんなの話を聞くと木之本君はサッカー部らしい。確かにとっても上手。
おもえば月城君だって、見ず知らずのわたしに親切に道を教えてくれたし。
いわれてみればふたりとも美形だったかもしれない。
ここからふたりがしゃべっているのが見えた。
月城君が小学校の方に歩き出して石につまずくと、それに駆け寄った木之本君が小学生の女の子に視線を送っている。
「ひゃあっ!」
すると次の瞬間、とてつもない突風が吹くと、大きな砂埃があがった。
その直後にあちらこちらからザワザワと驚きの声が聞こえる。
「なんだろ今の風」
「すごい風だったね……、どうかした?森下さん」
「えっ…な、なんでもないの、…ははは……」
普通の風じゃなかった。
小さい頃から霊感みたいなものがあったわたしには、さっきの風は人工的ともいえない、何かとても不自然なものに思えた。
今までに感じたことがある、違和感。
人工的ではないけれど、全くの自然でもない風はいったいどこから吹いてきたんだろうか。
授業が終わって駐輪場に向かおうとしたわたしは、同じクラスの女の子に呼び止められていた。
「森下さん何かクラブに入る予定は?」
「ごめんなさい、入る予定ないの」
前の学校でも部活をしていなかったわたしは、転校してもとくに部活をしようとは思っていなかった。
「そう……でもよかったら明日の早朝試合、来てみない?」
「早朝試合?」
「わたし弓道部なの。来るだけでもいいから、ね?」
「あ、でも「それじゃあ明日の朝に、またね!」
わたしの意見は、どうやら無視されてしまったらしい。
明日は早起きになるのかと沈みながら歩いていると、ちょうど木之本君と月城君が帰ろうとしているところだった。
わたしがみていることにに気がついたのか月城君はこちらに向かって手を振っていた。
「おーい森下さーん!いま帰り?」
「!」
急に話しかけられるとは思っていなかったので少し驚いてしまった。
「うん、これから商店街に行くつもりなの」
「なら一緒に行かない?付き合うから」
「え?」
まだ知り合って半日くらいだけど、結構仲よくなった月城君が一緒に行こうと誘ってくれたことにうれしくなった。
でもにこにこしている月城君に対して隣にいる木之本君がどんな人なのかまだよくわからないしなんだか少しこわかったから、わたしは誘いを断ろうと思った。
「ご近所さんなんだし、どう、行かない?」
「そんな、付き合ってもらうなんて悪いわ」
「いいから、いいから!」
わたしはやや強引に月城君に連れられて商店街への道を歩きはじめた。
自転車を押しながら歩いていると急に木之本君が話しだした。
「名前で呼べ、桃矢でいい」
「……どうして、急に」
「気ぃつかいすぎなんだよ、おまえは」
桃矢君と月城君いわく、わたしは一緒に帰りだしてからガチガチに緊張していたらしい。
そこで何か緊張をとく方法はないかと、とりあえず親しくなれるようにまずは名前から、なんて考えだったらしい。
「あ、実はぼくも転校生なんだよ?」
それから商店街まで、2人はわたしの緊張を和ませようとたくさん話しかけてくれた。
そんな2人の優しさにわたしは笑顔になっていた。
「そうやってもっと笑ったほうがいい」
木之本君は、ほんとうに優しい。
見た目から感じられるものとは全然違う、優しくて、人のことを思いやれるような素敵な人だと、この数時間でそう思った。
これで女の子にもてないわけがない。わたしはものすごく納得していた。
でもまだ少し、本当に少しだけ、たまに不機嫌そうになる表情がこわかったとは言えないけど、わたしはその時間を楽しんだ。
話しが終わるのと同時にちょうど商店街についたので、わたしは買いたいものを探しに、2人を残してその場をさった。
「森下さんって、すっごく感じのいい人だよね」
「ああ、そうだな」
「困ってる人はほっとけないなんて優しいね、とーや」
「うるせー」
人見知りなのもあってか、初対面の人と仲よくなれるなんていままであんまりなかった。
でもなぜか月城君と桃矢君とは、もう仲よくなれてる気がしていた。
わたしはふと我に返ると、早く月城君と桃矢君のところに帰ろうと足を急がせた。
「待たせてごめんなさい」
「全然待ってないから大丈夫だよ」
「それより、欲しいもんは買えたのか?」
「うん、おかげさまで」
これからは必要なものが出来たらすぐに買いにこれるくらいにはお店の場所も覚えられたし、ちょうど買いたかったものも買えたし、わたしはすごく満足していた。
「それで、これなんだけど」
「?」
「今日はわざわざついて来てくれてありがとう。これ、どうぞ食べて」
どうしてもきょうのお礼に何かしたかったから、わたしはそばにあった売店で鯛焼きを買っておいた。
「わー鯛焼き!ぼく大好きなんだ、ありがとう!」
「気ぃつかわなくていいっつったのに」
わたしは出来たての鯛焼きを2人に渡して、話しを続けた。
「あのね、ふたりも、どうぞ名前で呼んで?」
わたしは月城君と桃矢君と、もっと仲よくなりたいと思ったから、思い切ってそんなことを言ってみた。
「まなみ、だな」
「………ありがとう」
桃矢君の隣で月城君はいつものようなにこにこ顔をしている。
「じゃあそろそろ帰ろっか!」
もう、友達
(きょうはまなみと仲よくなれて良かったね)
(ああ、そうだな)
(もっともっとお話、したいな)