21 予感〈1〉
「あっ、来た来た」
今朝寝坊してしまったさくらちゃんがものすごい速さでローラーブレードを走らせて後ろから迫ってきていた。
いつものように月城君と待ち合わせ場所にいたら、先に着いた桃矢君を見てなぜさくらちゃんがいないのかとはじめは驚いた。
そうしたら桃矢君は「さくらは寝坊だ」と意地悪そうな顔をして、早々と月城君を自転車の後ろに乗せて出発してしまった。
それでもさくらちゃんはすぐに追いついたけれど。
「おはようございます!まなみさんっ」
「おはよう、さくらちゃん」
わたしは毎朝、さくらちゃんのこの笑顔を楽しみにしていた。
「あんま急ぐとこけるぞ」
「へいきだもん」
「おまえが平気でもころんだ道路に穴があくだろ」
「なんですってぇ!」
いつものような会話がはじまったかと思えば、さくらちゃんは月城君の目の前だということを思い出したのか急に静かになってしまった。
そんなさくらちゃんが可愛くって思わずくすっと笑ってしまう。
そしてふと桃矢君と目が合うと、昨日歌帆と会って話していたことが鮮明に思い出されて、急に恥ずかしくなった。
『その家族みたいに大切な人のこと、もしかしたら好きなのかもしれない』
意識しないようにすればするほど、自分の気持ちに気づかされる。
桃矢君と会うだけで幸せな気持ちになれたのは、彼のことが好きだったからだと、改めて思った。
「まなみ?どうかした?」
「え、あっ…なんでもないの!ちょっと考え事しちゃって」
そして月城君の一言で我にかえると、わたしは皆に遅れないようにと元気よくペダルをこいだ。
「あや?」
いつもの通学路を進んでいると、途中に工事中の看板があって通れなくなっていた。
「しかたないね、まわり道になっちゃうけど」
そう言って月城君が指をさしたのは、きのうわたしが月峰神社に行くのに通った道だった。
「おっきな神社だねー」
その道を進んですぐに月峰神社が見えると、月城君は驚いたみたいに声をあげた。
「知ってた?」
「いえ、こっちあんまりこないから」
近所だから知っていると思っていたけれど、さくらちゃんと月城君の2人は知らなかったみたいで、月峰神社のほうを興味深そうに見ていた。
そんな2人をよそに桃矢君は何故か月峰神社のほうを見ようとしないで、少し焦っているようにもみえた。
こんな桃矢君をみるのは初めてだったけれど、無口なのはいつものことかと思って、その時はあまり気にはならなかった。