38 光と闇、太陽と月〈2〉
真っ暗になって、歌帆とケルベロスさんが話しはじめて結構な時間がたっているはずだ。
クロウカードと思われるこの気配もだんだん強くなっているみたいだった。
「で、嬢ちゃんは何者なんや」
「えっと……星條高校の」
「そうやのうて!んーっ……同じ空間におるのもはじめてや、けどすごい力やで」
「そう、ですか?」
「わいのシンボルは『太陽』、嬢ちゃんの持っとる力も同じ太陽や、道理で…」
言われたことにはっと驚いた。
そして今も鞄の中にある歌帆からもらった鏡を取り出した。
「その力、これのせいかもしれません」
「………それは!」
ひらかれた鏡と向かい合っている面に描かれている柄は太陽、歌帆のもっている月の鈴といっしょに納められていたものだ。
ケルベロスさんにこれはクロウ・リードがつくったもので、月峰神社に納められていたものだと説明すればふむ、と納得したように相づちをうつ。
「嬢ちゃんは元々そこまで強い力を持っとるわけやなかったんやろ、けどそれの力のおかげで、今も闇にのまれんとすんどるんや」
確かに、そうだ。
わたしは力があるとはいっても、それが歌帆みたいな強力なものではなかった。
きっとこの鏡を持っていなかったら闇にのまれていたはず。そんな事を考えていると、また何か強い力を感じた。
「……力の気配がする、さくらが『鍵』使たな」
こんなに真っ暗な中で、さくらちゃんはきっと今一人だ。
李君と一緒ならいいけれど、多分李君の力では闇にのまれてしまっているだろうから。
それに何も説明出来ないままで歌帆についてきてしまったから、桃矢君や月城君のことが心配だった。
「にしても、クロウが気まぐれで創ったにしては力が強すぎる……」
嬢ちゃんはどこまで知っとる、とわたしの持ている鏡に触れながらたずねると歌帆が彼女は何も知らないわとこたえる。
わたしは本当に何も知らないけれど、この鏡を何故持っているのかどうかとか、本当に何も知らないということを信じてもらえるのだろうか。
「しかも何でなんも知らん嬢ちゃんがそんなもん持っとるんや、て聞きたいところやけど……」
「けど?」
突然さっきまでのシリアスな空気を吹き飛ばすような笑顔をケルベロスさんはみせた。
「……ま!嬢ちゃんは悪いもんと違うやろうから安心や」
よろしゅうな、と手を差し出されたから、わたしは思わずはい!とその手をとった。
そしてまたしばらくするとクロウカードの気配が弱くなって、同時にさくらちゃんの気配も感じた。
「さくらがカードの正体に気づいたんや!」
一瞬空間が歪むようにぐわりと揺れたものの、またすぐもとの真っ暗な状態にもどってしまう。
「また真っ暗……」
「正体がわかっただけじゃ『
さくらちゃんがクロウカードを封印出来なければ、ずっとこの闇の中なのだろうか。
不安になっていると、歌帆が大丈夫よとわたしの手を握って励ましてくれた。
「……また闇が深くなった、このままじゃ木之本さん闇の中に……」
「閉じ込められてしまう」
「木之本さんでも?」
「『
そしてどれくらい時間がたっただろうか。
ぱっと電気がつくように、真っ暗だった空間は元通りになった。
けれどざわつく事は無くて、父兄は皆さっきまでの事に気づいていないみたいだった。
さくらちゃんはクロウカードを封印出来て、皆が無事だったことが嬉しかったのか、隣にいる李君に抱きついて喜んでいた。
それをみた桃矢君は思わず席から立ち上がって怒っていたけれど。
「誰も気づいてないみたいね」
「『
何があったのか気づいていない知世ちゃんをよそに、調整室からさくらちゃんを見つめる歌帆はほっと息をついた。
「よかった、木之本さん何ともなくて」
そんな歌帆の一言に何か思いついたのか、難しい表情をしてケルベロスさんは聞く。
「……手出しするつもりか」
「わたしの役は別にあるの」
「なんでわかるんや」
クロウカードを集めるのを手伝う訳ではない、そして手出しするのとは違う役目とは一体何なのか。
はじめに言っていた『最後』とは一体何の最後なのか。
それにさっきこの鏡を説明していたとき、月の鈴のことには全く触れていなかったことも気になった。
「……なんとなく」
やっぱり歌帆は全て知っているんじゃないのか。
そう思わずにはいられなかった。
光と闇、太陽と月
(ケルベロスさん、どうしてわたしは悪い者じゃないって思うんです?)
(んなもん、同じ太陽の力つこてるもんに悪いもんはおらへんからや!)