05 また、きみと同じだ〈1〉




『あなたがこれから訪れる先に、いろんなことが起こるの』

『いずれわかるわ』

 わたしは自転車を降りて歩いていた。
 ふと空を見上げて星を見つめていたら歌帆が言っていたことを思い出した。

———やっぱりわからないよ、歌帆。

 夕食を作っている最中、お米が残り少なくなっていたから忘れないうちに買いに行こうと近くの売店まで行っていた。
 ふと学校のことを思い出して、浮かんだクラスメイトの顔と名前が合うように頭の中の記憶をめぐらせていた。

———そういえば、桃矢君からすごい力を感じるんだよね……。

 横にいるとわかるあの感じ。
 きっと桃矢君にも他の人には見えないものが見えるんだろうな。
 月城君のことにも絶対気づいてるはずだと思う。
 でもそんな月城君と友達なんてやっぱり桃矢君は優しいんだな、とひとりで納得していた。

 そのとき、わたしの目にはある人が映っていた。

「……さくらちゃん……?」

 もう夜なのに小学生の女の子がお出かけなんておかしい。
 他にもうひとり女の子がいるみたいだし、なぜなのかさくらちゃんはなんだか可愛らしいひらひらしたお洋服を着ているみたいだった。
 思えばここはちょうど友枝小学校のとなり。
 そして声をかける間もなく2人は校舎の中へ入っていった。

 小学生2人が夜に出歩いているなんてほっておけないから、わたしは自転車を校舎の近くにとめてついていくことにした。
 そしてさくらちゃんを呼ぼうとしたときだった。


……ピルルルル……


———まさかっ、あの鳥?!


「さくらちゃ…………!」

 あまりの突風に途中から声が出なくなった。そして気がつけばわたしは誰かに背中を押さえられていた。
 風の強さに体が飛ばされそうになって、わたしは後ろに誰がいるのかわからないまま近くの木に必死でしがみついた。
 するとさっきまでそこにいたさくらちゃんが不思議な棒を持って大声を出していた。

 うっすら開けた目から鳥の姿が見える。そしてさくらちゃんがその鳥の真横にいるのがわかった。

「さくらちゃん危ない!」

 風のせいで声がまったく届かない。
 でも次の瞬間、さっきまでとてつもない大きさだった鳥がみるみるうちに小さくなっていった。


 わたしは何がなんだかわからず、声を出すことができなかった。
 するとさっきまで背中を押さえていた手がすっとはなれていくのがわかった。
 それと同時にわたしは後ろにいた人物が誰なのかわかった。それまで誰なのか気づかなかったのがおかしいくらいの強い力みたいなものをもってる人。



「……桃矢君……」
「何してんだ、こんなとこで」

 ただでさえさっきのことにびっくりしていたのに、目の前に桃矢君がいることにびっくりする。

「あれってさくらちゃん……?」
「……そうみたいだな」

 桃矢君はこの状況にまったく驚いていないみたいだった。

「これ……いったい何なの?」
「おれも詳しくは知らねぇ。けど、だいたいはわかるよ」
「?」

 桃矢君の目は、しっかりとわたしの目をとらえていた。

「……お前……ゆきのこと、わかってんだろ?」