01 不思議なことばかり〈3〉
さくらちゃん家で夕飯をいっしょにつくっている間もずっと雨は降り続けていた。
夕飯のメニューはハンバーグからハンバーググラタンにランクアップさせて、さくらちゃんは月城君の為に頑張ってお料理をした。さいしょは月城君も手伝うと言っていたけれど、うまく断ってわたしとさくらちゃんだけでお料理をすることにした。
一生懸命つくったものを月城君に食べてもらいたいというさくらちゃんの為だ。
そしてさすがさくらちゃん、ハンバーググラタンはとっても上手に出来上がった。
「ごちそうさまー」
「ごっそさん」
おいしかったよ、と月城君にほめられて赤くなるさくらちゃん。
「ほとんどさくらちゃんがつくったんだよ」
「そんなことないです!」
「さくらちゃん、お料理上手だね」
わたしが手伝ったのは本当に少しだけだと教えると、さらに追い討ちをかける月城君にさらに赤くなるさくらちゃん。
「おれバイトだから」
「ぼくかたづけ手伝ってくよ」
ごちそうになったし、という月城君に出て行く準備をする桃矢君。これで月城君をお家に呼ぶ作戦はやっと成功したといっていい。
わたしと月城君はひとまず桃矢君を見送ることにした。
「まだ降ってるね」
傘をとる桃矢君にそう話しかける月城君。
「……妙な雨だかんな」
やっぱり桃矢君もこの不思議な雨のことに気づいていたんだ。だから月城君をさくらちゃん家に呼びたいわたし達の作戦にも素早く気づいて、それをゆるしてくれたのかもしれない。
「なに?なんかいった?」
「いや」
月城君は何も知らないみたいだ。
月城君が
あのあと
「帰りはゆきに送ってもらえよ。頼んだ、じゃあな」
「いってらっしゃい」
傘をひらいて出て行く桃矢君を見送って、わたしは片づけに戻ろうとすると、二階から降りてきたケロちゃんと鉢合わせた。
ケロちゃんはわたしの隣にとどまると、月城君に後ろから元の姿に戻るように声をかける。すると前にみたときと同じように大きな羽根に包まれて、眩しいくらいの光とともに
「なんや寝起きみたいに機嫌わるいなぁ」
「…『雪兎』が…」
「あ?」
「…仮の姿と本来の姿が別人格というのは面倒なものだな…」
姿をみるのが2回目のわたしでもそれが機嫌の悪い表情なのはよくわかった。けれどその姿はおそろしいほどに綺麗で美しい。
ケロちゃんから聞いたように性別はないらしいけど、どちらともとれないそのたたずまいがさらにその綺麗さを際立たせているような気がする。
「……あの、」
「?」
「いつも月城君と仲よくさせてもらってます、まなみです……」
「よく知っている」
この姿できちんと会うのははじめてなのだから挨拶をと思ったものの、何と話しかければいいのかわからなくてぎこちないものになってしまった。
それによく知っているって、なんだか、なんというか心臓に悪い。
「と、とりあえずさくらちゃんのところに!」
「せやな」
綺麗な姿で目が合うと緊張してしまうので、わたしははやくその場を離れたくなってそう口にした。
先に小走りでキッチンに移動するとほとんど後片づけは終わっていて、さくらちゃんは食後のお茶を準備していた。
「ごめんねさくらちゃん、最後のこれ、わたしするね」
少しだけ残っていた洗い物を片づけはじめれば、ケロちゃんと
お茶をいれていたところに気配で気がついたのだろう、後ろを振り返れば大きな声を出して驚くさくらちゃん。
わたしと同じように、やっぱりさくらちゃんにもその姿は心臓に悪いようだ。
「
「こいつ食いもんは食えんで」
「ほえ?でもケロちゃんは甘いものいっつも食べてるよね」
あったかいお茶を
「わいは食わんでもええんやけど必要に応じてな、わいは
人生楽しまんとな、というケロちゃんに無表情のユエさんの姿はやっぱり何度もみてなれようとしても心臓に悪い。
「おかわり」
「はーい」
お茶のおかわりを催促するケロちゃん。さくらちゃんの部屋まで移動してきていたので、さくらちゃんは1階までポットを持って去っていった。
「あの、」
「ん?」
「わたしここにいてもだいじょうぶなんですか?」
なんだかわたしも場違いのような気がしてそう話しかければ何の問題もないというように「まなみにもおってほしいんや」と言うケロちゃん。わたしにも何か話があるのだろうか。
「この雨、どう思う?」
「誰かが故意に降らせているものだろう」
ずっと黙っていた
わたしも自然のものではないと思うことを伝えた。
「わいもそう思う。……問題はそれが『誰か』やな」
ケロちゃんも
そこにお茶をいれたさくらちゃんがもどってきた。
「ほえええ!!」
さくらちゃんはケロちゃんの元の姿にも慣れないらしい。びっくりしたと胸を撫でていた。
「知世は?」
「電話したらおでかけだったの。お母さんとお食事にいったんだって」
さくらちゃんはカッパを着て、わたし達はペンギン公園にきていた。
はじめはわたしが足手まといになるんじゃないかと心配していたけれど、それほど自分達は弱くないし力ももっている、だから安心して欲しいと言われたのだ。そしてわたしも力があるからだいじょうぶだと。
ケロちゃんはこの鏡のことを学芸会のときから知っているし、歌帆のこともあったからだろう、何故かわたしのことを信頼してくれているみたいだった。
「それにまなみがおったほうがさくらが安心する」らしい。
「……雪兎さんは
「……ああ」
「じゃあ
「仮の姿の間のことも全部覚えている」
さくらちゃんは月城君のことを特別に思っている。
だからこそ
そうしているうち、急に雨が塊になってさくらちゃん目がけて襲ってきた。さくらちゃんから電話で聞いた様子と同じだった。
「さくら!!」
急いで駆け寄ろうとするケロちゃんと
「なんや!?」
「身体が…動かない…」