今日は終電を逃してタクシー帰り。ヘロヘロだ。何も考えられない。仕事のことしか考えられない。ぶっちゃけ今の自分にはピッタリだ。東都駅のロータリーでタクシーを呼ぶ。待機してたタクシーは帰宅難民者が捕まえて行ってしまったようで、電話で呼んだタクシーの到着を待つ。私以外にも同じような状況の人はいるようで、数人柱にもたれかかるようにして立っている。その中で、異様に小さい姿を見つけた。見覚えがありすぎる。あの子、なんでこんな深夜に一人で。
思わず近寄り、声をかけた。

「君、毛利先生のところの子だよね?一人?」
「わっ…お姉さん、この前安室さんと一緒にいた人?たしか…」
「名前です」
「そう、名前さん!実はちょっと事件に巻き込まれちゃって、色々あって電車逃しちゃったんだよね」
「コナンくん7歳だよね?」

7歳の子がこんな夜遅くに一人で居てしまうという状況。恐ろしい。いくら中身が17歳だったとしても。不審者に襲われるかもしれない。

「お迎えは?」
「博士…知り合いのおじさんに連絡したんだけど、寝てるみたいで繋がらなくて」
「毛利先生に電話した?」
「そ、それは…知り合いの家でお泊まりしてるって言ってるから、ちょっと…」
「…連絡できないんだね」

次来たタクシーに乗って博士の家行くよ!と彼は言うが、次に予約されてないタクシーがこのロータリーに来るのはいつになるやら。ちょうど私が呼んだ会社のタクシーがロータリーに入ってくるのが見えたし、誘拐だと思われませんようにと願いながら、コナンくんを抱き上げた。

「わっ」
「一緒に乗ろ!送ってあげる!米花町?」
「う、うん、ありがとう名前さん…いいの?」
「いいって」

遠回りになるが、(見た目が)小学一年生を置いてはいけない。そんな非道なことできない。ドライバーに米花町へ向かってくださいと頼み、タクシーに乗り込んだ。
隣の席に乗せたコナンくんからの視線が痛い。めっちゃ見てる。私のこと見てる。そりゃ、一度会っただけの女だもんね。私はすごく昔から勝手に知ってたけど、あなたにとっては1ヶ月以上前に一度会っただけの女だもんね。ちょっと疑ったりしちゃうんだよねきっと。迷宮なしの名探偵だもんね。わかる。

「名前さんはこんな時間までどうして外にいたの?明日…っていうか、今日?もお仕事でしょ?」
「一部の大人にはね、日付超える時間までお仕事する日もあるの…」
「それって、ブラック企業ってやつ?」
「残業代はしっかり出るけど勤務時間は完全にブラックだね」

この大人かわいそーって視線をいただいた。工藤くんの両親は人気小説家と元大女優だ。毛利先生も探偵だし、彼の周りの大人は言わばみんな自営業のようなものだ。私のように夜遅くまで会社に拘束されてる人なんて見慣れないんだろうな。

「名前さんって、安室さんのお友達なの?」
「へっ?安室さん?」
「安室さんに名前さんのこと聞いてもハッキリ教えてくれなくって」
「きいたの?あの人に?何て言ってた?」
「僕にもわからないから君にもわからないだろうねって」
「なに、なにそれ〜」

あはは〜と笑ってみせるが、内心大荒れだ。わからないってなんだ。どういう意味だ。
あの御墓参りの日、去り際に零が残した言葉がずっと頭に残っていた。忘れるために仕事を一生懸命やってるけど、ふとしたことで思い出すよね。
『俺がいなくても、名前は大丈夫だろ』って、何様のつもり。天下の降谷零様か。そうかそうか。わかる。当たり前じゃん。大丈夫だよ。何年一人で生きて来たと思ってるんだ。
私も零も、お互いがいない人生を歩んで行くことはできる。絶対に必要な存在かと言われれば、わからないと答える。わからないから、側に居ようとしてたんじゃないの。絶対に必要な存在になりそうだったから、あの人は安室透としてでも私に再び近付いて来てくれたんじゃなかったの。私の認識が間違っていたのかな。でも確かに聞いたよ、零が、私を好きだって言ってくれた言葉。

「私もちゃんとした答えは出せないんだけど」

降谷零は大切な幼なじみだ。ここでコナンくんに安室さんは幼馴染だよ〜なんて言えば、色々調べがついてしまうかもしれない。あれ、彼に正体?所属がバレてしまうのっていつなんだろう。もうバレてたりするのかな。でも私から繋がってしまうのはなんだか嫌だ。本来の筋書きでは絶対にならないことだ。降谷零との関係ではなく、安室透との関係。

「あの人にね、好きって言われたの」

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