無自覚、彼は知らず。


■「唖然、呆然」のその後。

ああ、これは完全に宣戦布告だなと思ったさ。


 side:次元


『ルパン三世、次元大介。…悪いが、その女は俺のモノだ。必ず奪い返しに行く、首を洗って待っていろ』


その言葉を最後に、映像はプツンと切れた。奴の動きから察するに、恐らくカメラの電源を切ったんだろう。不二子のことだ、簡単にはバレないようにカメラを仕掛けていたはずだが…さすがはFBIの切れ者と言うべきか。
あの変装を見抜いたことといい、カメラを見つけたことといい、大した観察眼の持ち主だな。コッチの道を歩いてる立場からすりゃあ、ひどく邪魔な奴だが―――表の人間、そしてお仲間からすれば頼りになる人間になるんだろうさ。

(現に嬢ちゃんが奴のことを話す時、えらく自慢げで嬉しそうだったし)

胸の奥で何かがチリ、と燃えたような気がしたが、気のせいだと思いこんで煙草に火をつけた。吸い込んだ紫煙を吐き出せば、遠くに飛んでいた思考がゆっくりと戻ってくる。
一度、深呼吸をすれば周りの光景もしっかりと映って…思わず苦笑が漏れたのは仕方がないことじゃないか?嬢ちゃんはまぁ、そうなってもおかしくねぇだろうが、ルパンまでマヌケな面を晒してポカンと口を開けていやがった。


「おいルパン、いつまでマヌケな面をしてやがる。嬢ちゃんもだ」
「あ、…あー、次元ってば回復早ぇな〜」
「お前の回復が遅ぇだけだろ。…だが、あの眼光の鋭さは参ったな」
「だなぁ。かんっぜんに俺達のことを敵視してやがる」


俺達は泥棒だから当たり前だけど、工藤ちゃんは自らの意思でこっち側にいんのになぁ?
にしし、と笑ったルパンはどこか楽しそうだ。気持ちはわからんでもないが。…それにしても、と視線を嬢ちゃんに向ければ、まーだ呆けた顔でパソコンの画面を眺めていやがる。僅かに頬を赤く染めているのも何だか腹が立つ。
その怒りが何に対するものなのかは、わからねぇ。考えるつもりも、答えを出す気にもならん。明らかにこれは面倒で、俺には不必要なものだってことがわかっているからだ。


「にしても、愛されちゃってんね〜工藤ちゃんってば」
「恥ずかしいやら嬉しいやら何かすごく複雑…!」
「その割にはなっさけなーいくらいに顔が緩んでるぜぇ?」


ルパンの言う通り、嬢ちゃんの顔は緩みに緩んで情けない。本当に恋人のこととなると一気にデレるんだな、コイツ。完全に惚気モードになってやがる。
それを見ていると、やけに面白くねぇと感じる自分がいた。


「次元?なに難しい顔してるんですか」
「……何でもねーよ。いい加減、ルームサービスで頼むもん決めちまおうぜ」
「あっすっかり忘れてた!」


何を食べよう、と再び悩み始めた姿を視界に収めて、無意識に口角を上げた。
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