熱烈、熱視線


■「唖然、呆然」:赤井と不二子

どこまで騙されてやるべきか、と思った。


 side:赤井


「自信あったんだけどなぁ、コレ」
「言っただろう、惚れた女を見間違うわけがない、と」


俺を呼び出したのは円香―――ではなく、彼女の変装をした峰不二子…ルパン三世の仲間の1人だった。
外見も、声も、本人にそっくりだったが…僅かに話し方や仕草が違う。もうひとつ付け加えるのであれば、円香はあまり積極的にキスを仕掛けてこない。稀になくはないが、あそこまで慣れた様子ではないからな。

(そのまま騙されたフリをしても良かったんだが、)

どうにも彼女ではない女に触れられたくはない、と本能が叫んだ。視界の端に小型カメラも見えたことだしな。どんな目的があるのかは知らんが、ルパン三世に繋がっているのは間違いがないだろう。


「でもほんと、意外だわ。シルバーブレッドがあ〜んなに情熱的だなんて」
「これでも血の通った人間なんでね。好いた女は大事にするさ」
「…いいわね、その愛しくって堪らないって瞳。貴方みたいにイイ男がすると尚更」
「お褒めの言葉をありがとう。…用事が済んだのなら、俺は帰る」


あら、残念。このまま朝までつき合ってもらおうと思ったのに。
妖艶な笑みを浮かべる女。男なら誰でも落ちるようなプロポーションと色気だとは思うが…だが、俺にはそれも効きそうにない。どんなに魅力的な女が目の前に現れようとも、俺にとって魅力的だと思えるのはこの世にはたった1人しかいないのだから。
きっと峰不二子も、それをわかっていて言葉を発しているに違いない。浮かべられた笑みが、それを証明しているような気がした。


「ひとつ、聞きたいことがある」
「なにかしら」
「彼女、…円香は無事なんだろうな?」
「やぁ〜ね!私やルパン達が子猫ちゃんに危害を加えると思う?」
「君達は泥棒だ。それだけで理由は十分じゃないかな?」
「ま、失礼ねぇ。―――無事よ、もうすぐ会えるんじゃないかしら」


それは決戦の日が近いことを現している、と思っていいだろう。恋人としてでも、ましてや相棒としてでもない円香と対峙するのは些か不本意だが、まぁこの際、仕方がない。事情が事情だ。だが―――フ、と笑みが零れる。どんな状態であれど、アイツの姿が見れるのならば何だっていいと思ってしまう。


「ねぇ、私も聞いてもいいかしら」
「好きにすればいい。もっとも、答えるとは限らんがな」
「子猫ちゃんとつき合っていなければ、私と夜を過ごしてくれた?」


峰不二子の口から零れ落ちた問いは、俺からしてみれば愚問の一言だ。


「無理だな。アイツと関係がなくとも、とっくの昔に心臓は持っていかれている」
「…聞くんじゃなかった。ゴチソウサマ」


ドアが閉まる寸前に見えたのは、呆れたような笑みを浮かべている女泥棒の顔。
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