裡側 伍




「兄上!」
「千寿郎か!どうした!」
「今日の夕餉は薩摩芋ご飯なのですが……名前さんは喜んでくれるでしょうか?」
「薩摩芋ご飯か!それはいいな!名前もきっと喜ぶぞ!」

肩に手を置くと嬉しそうに笑う
千寿郎と名前は気が合うようで俺が居ないときでも二人でよく話したりし、懐いている。その姿を見ているととても良いものを見ているような感慨深い気分になる。



千寿郎と別れ職員室に戻る途中、名前を見つけ口角が上がった。懐いてるのは千寿郎だけじゃないなと、俺も名前の虜だ。

「名前!今日の夕餉は薩摩芋御飯だそうだ!楽しみだな!」
「煉獄先生、こんにちは。夕飯の献立、千寿郎くんから聞いたんですか?」
「うむ!先程千寿郎に会ってだな!是非君にも食べてほしいと言っていたぞ!」
「嬉しいです!千寿郎くんの薩摩芋ごはん楽しみだなあ」
「むう、涎が垂れているぞ!」
「え!」
「冗談だ!はっはっは!」

俺が冗談を言うと顔を紅潮させて戸惑う彼女を見るともっと意地悪くしたい気持ちが高まるが学校なので我慢しよう。
彼女の立場を考えると校内で俺とばかり一緒に居るのも良くないだろう、なので此処で「煉獄先生」と言われようと訂正はしなかった。










・・・










今日の夕餉は薩摩芋御飯か!楽しみだ!
騎馬戦が白熱してしまい時間が大幅に過ぎてしまったが名前はまだ勤務中だろうか!

最後の授業を終え、足早に職員室に戻ると不死川が慈しみの表情をして名前の頭に手を乗せているのが目に入った。
頭に血が昇る。彼女に触れるな、そのような顔を向けるな、懐に入れていいのは俺だけだ!
名前の顔をみると彼女も顔を赤らめて恥ずかしそうにしていた。
その受け入れ難い光景にカッとなり気づいたらその手を退け彼女の手を引き歴史準備室に連れ出していた。


「何故、あんなに不死川と近かった。何故、君は紅潮していた。」
「へ?」
「危機感が無さすぎる。男など皆獣だ」
「えと、はい・・っ」

俺と目を合わせたままの彼女の目に涙が溜まっていくのがわかり、ごくりと唾を飲んだ。泣かせた。愛しい彼女をつまらぬ独占欲で泣かせてしまったのだ。俺はなんと不甲斐ない男ぞ!

「す、すまない!!泣かせたかったわけじゃない!怖がらせてしまったな!」
「うぐっ…ひっく、うぅ」

想いを伝えよう。彼女を抱き締めながら決意する。言い訳にもならぬ理由だが、これ以上名前を振り回したくない。

「・・・名前帰ろう、少し話がしたい。」

小さな体に抱き締め返され俺は己の情け無さに打ち拉がれるが、ここで止まっては駄目だ。彼女が落ち着くまで背中を撫で続ける。泣かせたのは俺だが、願わくは俺の隣で笑っていてほしいと願いながら。







落ち着いた頃に彼女を支えて車に乗る。
疲れたのか寝てしまった彼女を見て無防備過ぎるなと苦笑いしつつもその寝顔を見れる特権は誰にも譲ることが出来ないと決意が確固たるものになっていく、千寿郎には遅くなると連絡し彼女をゆっくり寝かせようと自身の賃貸に連れ帰った。





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痺莫