泣き止んだ星原は、ゆっくりと母親の話をし始めた。その横顔は、いつもみたいに消えそうで、大嫌いだ。


「お母さん、海が好きだったんです」


ゆっくりと浸食する波で靴が濡れるのも気にせずに、星原はまるで母親に甘えるかのように海へと近づく。その様子が何故だかひどく懐かしく思えて、俺は目を細めた。













「しんだ人は星になるって言うけど、わたしのおかあさんは空じゃなくて、海で見守ってくれてると思う。だから、おかあさんがいる海に会いにきてるの。」
「きみのおかあさん、魚なの?」
「魚だったら、あえるのになあ‥」
「‥‥」

その時俺は、寂しそうな彼女を笑わせたくて、笑った顔が見たくて、近くの砂をがばりと手に掴んだ。そして、


「いるよ、ほらここに。星がおちてる」











もし運命というものを信じるとするならという話を、前にしたことがある。俺がもし運命を信じるならそれは、あの人とまた恋に落ちる時だ。だからこそ、気付きたくなかった。気付いてることを、認めたくなかった。気付いてしまったらもう、俺が大嫌いなほど綺麗な横顔をしているこいつを、‥‥なまえを好きにならない理由が、なくなってしまうじゃないか。

ALICE+