「星原!!!」
ずっと気付かないふりをしていた。けれど、本当はずっと疑っていて、頭の片隅に確かに疑念として住み着いていた。答え合わせなんてしたくなかった。間違いであればいいのにと、気のせいならいいのにと、そう思っていた。今の、今まで。
星原が、目の前で倒れた。
「星原、意識ある?俺の声聞こえる?!」
「‥‥なる‥みや、くん‥」
「‥!」
返事があることに安心していると、星原は突然慌てたように笑顔を取り繕う。‥‥その笑顔にもう、騙されることはないっていうのに。
「あはは、転んで、頭打っちゃったみたいです‥」
「‥‥ほんと、バカなんじゃないの。マヌケすぎるよ‥」
こんなことになるまで気付かない、俺が。
「星原立てる?ほら、捕まっていいから」
「‥でも、成宮くんに、ご迷惑をおかけするわけには‥」
「は?!そんなこと気にしてる場合?!いいから、ほら!」
起き上がらせようと掴んだその腕があまりに細くて、引っ張り上げた体があまりに軽くて、少し怖くなった。
「?! な、成宮くん!お、重いですよ‥っ!」
「バーカ!運動部舐めてんの?!軽すぎて反吐がでるっての!」
勢いのままに星原を背負い、保健室へと歩き始める。後ろで星原がうだうだと何か言っている気がするけど、無視だ。
「言っとくけど、星原が遠慮しようが何度だって助けるからね」
「‥‥成宮くん‥」
「俺は明日も明後日も、星原となんでもない話がしたいんだ」
だからしなないでくれ、なんて。弱気な言葉が口から溢れそうになった。飲み込んだその言葉に気付いてか否か、星原は消え入りそうな声でありがとうと言った。
その日保健室に運んで以来、俺は糸が切れたように体調を崩し始めた星原を何度も何度も、幾度となく保健室に連れて行った。
なんでもないように振舞っていた彼女の体は、まるで俺のそんな女々しい気持ちをあざ笑うかのように、今も確かに音を立てて崩れていくのだった。