運命という言葉は、所詮装飾に過ぎない。
幸福を感じたり不幸に思ったりした時に、運命という言葉で着飾ってかっこつけて、自分の責任から逃げてるだけだ。
だから運命なんてほとんど信じちゃいないし、運命という言葉を使う人間にあまり良い感情もない。
だけど、もし運命というものを信じるとするなら、それはーーー‥‥
「成宮くん!こんにちはー!結婚しませんかー!」
「‥‥‥昨日言ったこと、聞いてなかったの?」
はあ、と大袈裟に溜息をついてやれば、目の前の溜息の原因は「幸せ逃げちゃうよ」なんて首を傾ける。誰のせいだと思ってんだ、誰の。
「昨日断ったでしょ?」
「でも、ほら!気が変わってるかもと!」
「昨日の今日で変わるわけないじゃん!俺を何だと思ってんのさ!」
にこにこと元気よく成宮くんと答えられて、がくりと項垂れる。
そうだけど、そういうことじゃないじゃん。視線でそう念じてみるけれど、見るからに頭の弱そうな子だ。多分伝わってない‥‥というか、絶対伝わってないだろう。
昨日、突然俺に公開プロポーズをしでかした彼女は、そのまま俺に返事を聞いてきた。冗談にしても彼女に見覚えも聞き覚えもなかったので、人の目もあったけれど素直にごめんねと謝ろうとした。
すると彼女は待ち時間が長すぎたのか、俺を好きになる経緯を話し始めた。ものの数秒で終わった。これは所謂、一目惚れに入るのだろうか。成宮くんですか、と聞かれた瞬間この人俺のファンじゃないなとは思ったけど、まさか一目惚れとは。さすがオイラ。
とは言え、運命を感じましたと言われて、はいそうですかと付き合う人間っているの?見た目が可愛いからってOKするバカはいそうだけど。
彼女は特別見た目が可愛い‥わけでは、ない。普通だ、普通。悪く言えば地味。
けど、言ってることがちょっとぶっとんでる。普通運命を感じたからってその日に突然プロポーズする?しない、絶対しない。意味わかんない。見た目に反して中身が普通じゃなさすぎる。
「大体なんでいきなり結婚なわけ?付き合うとかじゃないの?」
「成宮くんとすれ違った時に、この人と結婚すると確信したので!」
「あー、うん。そこはもういいや‥」
俺の手には負えない凄まじいマイペースっぷりに、お手上げと言わんばかりに両手を上げる。何を思ったのかそのままハイタッチされた。
「あの!わたし成宮くんのこと何にも知らないし、成宮くんもわたしのこと知らないと思うので、まずはお友だちになりたいです!」
「ともだち?」
「そう!そしてゆくゆくは結婚を‥‥」
俺から手を離して自分の手と手を合わせ幸せそうに微笑む彼女に、うっかり笑ってしまった。脳内お花畑だなこの子。