「成宮くんこんにちは!結婚しませんか!」
机の前にやってくるなり、彼女は朗らかにそう言った。
今日で三日目。どうせなら、三日坊主で終わってくれたらいいんだけど。
「また来たの‥‥えーと、何さんだっけ?」
「星原です!」
「星原さんか。君も懲りないねえ」
「はい!ポジティブだけが取り柄です!」
星原さんはびしっと手を上げてまるで褒められたかのように嬉しそうにしていた。褒めたつもりは全くなかったけど、本人が嬉しそうならいいか、どうでも。
というかそもそも、名乗ったの今日初めてじゃない?
「それに、わたし達はお友だちですし!会いに来るのは当然です!」
「そう言う割に、名乗ったの今のが初めてだけどね」
「あれっ名乗りませんでした‥?」
おかしいなーなんて頭を掻きながら、星原さんは照れ臭そうに笑った。今の話のどこに照れる要素があったのかは分からないけど、照れた顔はまあ、可愛くなくも、ない。と言っても中の下だけど。
「手始めに、胃袋から掴んでいこうかと思うのですが、成宮くんは何が好きですか?」
「え、何か作ってくる気なの?」
正直、料理が得意そうには見えない。いや、見た目だけなら出来そうだけど、彼女と話してる限りじゃ爆発してもおかしくなさそうだ。
さすがに断ろうかと思ったけれど、だめ?と小さな声で首を傾けられたのを見て、ぐらりと心が揺らいだ。急に控えめにそういうこと言わないでよね。俺ってば優しいから許してあげたくなっちゃうじゃん。
「あ、スポーツしてるんだっけ!太るようなものは駄目か‥」
「‥‥‥あー、クッキーとかならいいんじゃない?」
「クッキー!お好きなんですか!」
「いや、別に。面白半分」
じゃあ面白いクッキーを作ってきますね!と言って、彼女は去っていった。
‥‥‥面白いクッキーって、一体何なのだろうか。少しばかり明日に期待を寄せながら、机に突っ伏した。