諧謔
我の在りし日
腐乱せむ

短歌と俳句と詩
朱が落ちて鳥居の木肌見えしこと虚だと実だと名付けて遊ぶ

泣き笑いたわむれたる子らの声無垢とのたまう親を喰らいて

今ここで得体のしれぬ郷愁が産道かき分け喉より来たる

奪われる晩夏さよなら醒めまして火放ち進む道行きに雨

夜半にて露座し我待つ星降月も見えざるこんなまなこで

流すべき血も臓物も汲み取りに放りて澱むたましい啜る

昨晩は確かに腹を上へ向け死んでたはずと染み付く床見て

ふと引かれ振り返れども誰も居ぬ乗った背嚢重み増す帰路


247首〜258首

どうしてかこれでよかったよかったと言い訳せねば生きてもゆけぬ

帰ろうか水蹴る尾ひれ脳裏にはみなそこ咲ける花を想いて

本当に欲しい物などひと握り今日も探して墓すら暴く

果てしなく光り続ける清流もいつか乾くと朝日が刺さる

打ち寄せるがらくた懐きどのように捨てるか壊すか思いて歩む

区切ろうと夢も現も大差なく今となってはどちらも見えぬ

その花をいただけますか散り際の。見向きもされず看取り手なくば。


240首〜246首

生のため伸ばされた手がこんなにも冷え切っていてどうすると泣く

尽くすべき術も言葉もとうになくそれでも未だ夢で鈴鳴る

願うことなどなにもないまぼろしの切なさを知る人々のため生きる

まぼろしはなんの意味も持たねども尤もらしくこじ開けゆきて

泣けもせず声すらあげず小躯だき八つに足すよう自ら縄かけ

朽ち果てた名残り吸い込む我のおく塵か根雪か音なく占む


234首〜239首

爪そろえ喉をただただ撫であげるゆくな季節よ血も流さずに

チャックはわずか開かれん覗くもの冥きを溢し背に揺らるる

深海に視神経も臍の緒も潰れ捩れ我は死を待つ

雨降らば汚水と川に区別なく泡立つ虹へ我も混ざりて

飛沫蹴る飛ばして遠く空高く切れない硝子で太陽刻む

言葉とは真なる吐瀉物なればこそ過食にぬくみ嘔吐に冷えん

帰り道なきがらひかる夕刻に踏み潰しては明星指せり

赤き雲空を覆いて降り注ぐ黒い雨に我らが燃える


226首〜233首

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