諧謔
我の在りし日
腐乱せむ

短歌と俳句と詩
穴掘りて自ら入るしあわせが何故に穢され色褪せゆくのか

網目にてひととき番う睛眸を引き裂く烈日無邪気な声音

もうなにも見えないただの石塊は在りし日たしかに世界が在って

渺渺とこれほど広いあめつちにすさぶ風にも卑小が擾され

指と指還るべき場所定めても揉まれ擾れて果てに縊れた
―二〇二〇年七月二日


196首〜200首

風化せよ通い路絶えたまぼろしは綻ぶことなく砂塵還りき

金色の稲穂を越えてまだ生きるあのまばゆさを消し去りながら

月光に冷え冷えひかる砂漠ゆく眠りに飢えて惑った果てに

我ときみ似ても似つかぬ手指持ち似通ったのはただ首の痣

プラナリア我の細胞削ぎ落としそれでなにゆえ乞うというのか

暗闇に多くが集う色彩の見えてよかった試しなどない

空のうつわ懸命な手つきなみなみ星を注げど穴から無に帰す
―二〇二〇年七月一日


189首〜195首

言の葉の花の盛りは瞬く間洋墨の一滴乾くも遅し

導べなき世をば夜な夜な歩みゆく違えた道のぬくみに眩み

朽ちたるを悲し侘しと言いし者悼んだ先の骸すら見ぬ

外連味を含んだ虚勢無理解の他に理由もないのだろうに

鶴を折り針刺し数え千回目神亡き世々へ妄執織りて

なめらかに産毛のそよぐ肌合いに数えたことも夏は溶かすの

夏に見る蝉のぬけがら蝶のはね空のひかりがひとすじに消ゆ

手紙書く替える衣も失せたころ衣装箪笥の投函口へ
―二〇二〇年六月三十日


181首〜188首

昏昏と眠り続けてあめつちへ煙となりて我消え去りぬ

風が吹きまわる風車の静けさを我は見ているただいつまでも

初夏の候ひどく冷たい雨が降り無音映画に垂れる冷や汗

雨脚が冷え冷えすさび部屋に降り物が減りゆく六畳浸せり
―二〇二〇年六月二十九日


177首〜180首

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