諧謔
我の在りし日
腐乱せむ

短歌と俳句と詩
錆び朽ちて高く錠鳴る恨むならどうかそのまま開かないでね

きみとかす ひびきとひかり ぼくさえも きみとかしてく君を溶かして

在りし日星に擬えて繰り返す届かないから輝いてると

高架下眠っているひび傷だらけの宝石や嘘きみと笑ったひび

―二〇二〇年六月三日


123首〜126首

偲ぶれど解なきことと磔刑に処さるる蝶のなまえをほど

磔刑の蝶腐敗し流れ出す黄泉路はそちら二度は惑うな

刻む名に問わず語りと雨伝うたましい眠らぬむなしき石塊いしくれ

問うた名へ積もる埃と色褪せし外皮を裂いてこころに触れて

夏がくる纏わりつきし虫々に問わず語りす「おまえはだあれ」

嗅ぎ取った繁みに残る冬の気配「おまえはかつてあの人だったの」

連作 冬虫夏草 ―二〇二〇年六月二日


117首〜122首

ナイフ持てはらわた結ぶ覚悟抱きころすべきかころさざるべきかと
―二〇二〇年六月一日

繁吹いた洋墨インクのかおり。違いなぞたったそれだけ。てのひら重ねて。
―二〇二〇年六月二日

うとうとと眼差し柔き色灯すいつまででも見ていたかった
―二〇二〇年六月二日


114首〜116首

匂ひたる風の境い目我立てり聳えし雲と命のぬくみ
―二〇二〇年五月二九日

凍てる弓撓るも虚ろ響きたるキィンと飛び立つ音の悲しさ
―二〇二〇年五月三一日

磨り硝子信号遅れ踏み出せぬあかあおきいろ無価値の霧笛
―二〇二〇年五月三一日

君が去り凍てた石とて崩れけり我が奥津城よいづこにありや
―二〇二〇年五月三一日


110首〜113首

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