2019/04/08

司書幼児化没一覧

・幼女化している

「ととさま!」
くん、と引っ張られた裾にそちらをみる。いたのは和装の子供だ。こんな時間に、と思ったが、子供に見覚えがあったものだから幸田露伴は目を瞬いた。
「ナマエか?」
そう尋ねれば子供は大きく頷いてーーととさま!と抱きついた。これはまた変なくすりでも飲んだのかと見ていれば、あるじー?と聞き慣れた声がしてそちらを見れば、陸奥守という青年がいるではないか。
「おーすまんのぅ、先生」
「むっちゃん、ととさま!」
「陸奥守、どうなってる?」
「わからん。調査中じゃが、どうも一部がこうなっちょるらしい。で、どういうわけかわしら以外に初めて見た人間を家族やと思うようでのぅ」
「だから俺が父親か」
「おん」
「あの屋敷から出さないという選択肢はなかったのか」
「いや、ワシらもそうするつもりやったんじゃけんど……主が勝手に父様父様言うてこっちにきた」
悪びれもなく笑ってみせた陸奥守に露伴は息を吐く。ととさま!とニコニコ笑うさまは可愛らしい。が、今、子持ちになった覚えなどない。しばらく頼む!と言って駆け出した陸奥守に露伴は目を瞬く。残された子供は、むっちゃーん?と呑気に首を傾げた。

==

「佐藤、しばらくの業務なんだがな」
幸田露伴の歯切れの悪い言葉に、そこにいた面々は彼を見る。佐藤はその足元に小さな手を見つけて首を傾げる。
「迷子ですか?」
「いいや、司書だ」
その返答に周りは動きを止めた。
「ナマエ?」
「ああ」
視線は未だに小さな手である。森鴎外がやれやれと息を吐いた。
「また立川の仕業か」
「立川?」
「違うんですか?」
「陸奥守からは向こうの一部で起こってると聞いたが」
むしろ何故立川という司書の名前が出たんだろうか。そう首を傾げたが教えてくれないらしい。正岡子規がしゃがんで手に持っていた最中を差し出す。ほおら、ナマエ、最中だぞ。そんな言葉に子供が顔をのぞかせた。
「もなか……?」
「おーおーまた小さな姿になってらぁ。大福もあるぞ」
「……いちにいが、知らない人から、もらっちゃダメって」
「おりゃあたちのこと、わからんと?」
「それにしては先生に懐いていますけどね」
「知らない人じゃない。俺の知り合いだ」
「ととさまの?」
そのたった一言で周りは動きをまた止めた。ととさま、とは。露伴は諦めたようにそうだから食べても構わんと告げるとナマエは嬉々と最中を受け取った。
「幸田先生を父親だと思ってるのか」
「どうやら外で初めて見た人物を家族だと思うらしい」
「そんな雛鳥みたいな」
「ほうら、ナマエ、まんじゅうもあるぞ」
「おまんじゅ!」
着々と餌付けされるナマエに露伴は食べすぎるなよ、と口を出す。
「じゃあ館長や棋院達に話してしばらくは司書なしでできる書類をするか……」
「そうだな、それがいいかも知れん」

==みたいな話。ちなみに寝るときは本丸にかえる。

苗字さんが幼児化したらしい。その知らせを聞いてみんなで立川さんを見たのは仕方ないと思う。まぁ、本人より先に佐藤先生が否定したけど。しかしながら、「今回は違う」と言っているあたり立川さんだと疑ったみたいである。これには立川さんも抗議したが、按司くんが前例があるといった途端目線をそらした。幸田先生に抱きついてこちらを見ようともしない苗字さんはたしかに幼い。
「菜乃花より小さい?」
「ああ、多分な。3、4歳くらいじゃないかって森先生は言ってた」
「おーい、ナマエちゃーん?」
そう覗き込んだ立川さんに苗字さんは幸田先生にしがみついた。
「でもなんでまた幸田先生に」
「先生を父親だと思ってる」
「ん?」
「どうやらこっちで始めてみた人を親だと思うらしい」
「雛鳥かよ」
「それはもう聞いた。ほら、ナマエ、挨拶は?」
佐藤先生の促しに苗字さんはちらりとこちらをみた。向いた青い目にああ苗字さんだと理解する。
「こん、に、ちは、」
それだけ告げてまた幸田先生に抱きついた苗字さんに人見知りだなぁ、と思う。棋院くんが同じことを思ったらしく口を開く。
「人見知りですね」
「いや、さっき会派のメンバーにはすぐ慣れたんだけどな」
「按司の顔が怖いからやなぁ」
ケラケラと笑ったオダサクさんに、館長が「いや、あれは眠たいからじゃないか」と突っ込む。その言葉はその通りで苗字さんーー改めナマエちゃんはしばらくして寝息を立てた。
まぁ、その後夕方ぐらいに陸奥守くんが迎えに来たけれど。流石に夜も任せられないと苦笑いした彼にナマエちゃんが泣きだしたのはすぐのことである。……保育園かな?

==

朝、ファーのついたジャージをきた知らない青年がナマエちゃんの手を引いて歩いていた。誰だろうか、と思っていれば佐藤先生がその姿をみて「獅子王じゃないか」と呼びかける。
「お、春夫発見」
「はるさー、はっけー!」
にこにこと上機嫌である。というか、呼び捨てとはるさん呼びなのかと思っていれば彼は気にしてないらしい。というか、逆に佐藤先生が敬語である。
「珍しいですね、貴方がこちらに来るのは」
「主がこうなったから陸奥守とか長谷部が仕事に追われてるんだ。まぁ、ここに主をずっと任せるのもどうかっていうことで今日は手が空いてる俺がきたんだよ。なー?」
「なー?」
ふむ、ならば彼は苗字さんのところにいる刀剣だろうか。
「明日からもチラホラ手が空いてる奴が来るとは思う」
「ありがとうございます」
「相変わらず型苦しいなぁ。別にタメ口でいいのに」
不満そうに告げた彼に、佐藤先生が苦笑いした。
「善処します」

==

まぁ、苗字さんのことは文豪や職員達にも周知された。何故か露伴先生を父親だと思っていることも、苗字さんの家から人がくることもだ。青年をみて珍しいな、という苗字さんの第1会派をみる。森先生も珍しそうに目を瞬く。
「佐藤先生敬語でしたけど」
「彼は結構見た目が詐欺だからな。平安時代の生まれだそうだ」
その言葉に、ん?と動きを止める。聞こえていた文豪が森先生をみる。
「平安時代?」
「獅子王ー、一緒にさけのまねぇか?」
「ぼっさんあんま飲みすぎんなよー!今日は遠慮しとく!」
「とーとーさーまー!」
「あ、こら、主!急に走ったらこけ……あちゃー」
「ししに、いたいー」
「急に走るからだろー?」
「あ、不良系かと思ったけど違うんだね」
やり取りを見ていた大槌さんが苦笑いしながら告げる。たしかに不良系ではないらしい。わんわん泣くナマエちゃんを抱き上げた彼は慣れたようにあやす。まぁそれに露伴先生がいくと、ナマエちゃんはケロリと泣き止んで嬉しそうに抱きついた。
「吉川先生、解説頼みますわ」
「名前がわからないとなぁ」
「獅子王って呼ばれてましたよ」
「ああ、ならば、平安時代、鵺退治の恩賞として贈られた刀かもしれないな」
その言葉に僕らと初期文豪が頭を抱えた。見えない。

==

苗字さんが連れてくる刀剣男士は結構限られていたらしい。ナマエちゃんに芥川さんが興味本位で「君の使用人の話を聞きたいな」といったことが発端だ。翌日ナマエちゃんが刀帳と書かれた本を持ってきたのである。その日の付き添いはこれまた初めてみる青年だった。
「まぁ、普段こちらに顔をのぞかせるのはこれ以上強くならない奴か短刀、酒飲みぐらいだからなぁ」
「短刀?」
「ほら、ちっこい奴らだよ。酒飲みは日本号と次郎太刀」
「ぎねちゃんは、槍!」
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