図太く生きてる奴は鈍感ってわけじゃない

 言いたいことだけ言うと河南は今度はパフェに手をつけだした。彼女の前には既に大量の空いた皿が並べられている。漸くデザートだった。
「それにしても意外だね。俺、河南ちゃんはあいつに興味ないものだと思ってたよ」
「どういう意味だ」
「えっいや、そのまんまの意味だけど…あいつがウジウジしてるのもどうでいいと思ってたってこと」
 答えてやればふむ、と頷いて彼女はスプーンを咥えた。行儀が悪い。やめなさいと窘めれば案外すぐにそれを口から離した。そして生クリームとアイスを混ぜて掬う。どろりとした塊がスプーンに鎮座する。
「あいつらの関係がどういう結末になろうが興味はない…ただ、どちらにしろもう白を切るのは無理だろうと考えただけだ」
「………」
私が帰る前に・・・・・・何かしらの決着を着けてもらわねばなんか気持ち悪い」
 ああ確かに後ろ髪を引かれる感じは嫌だよね――と同意して、はたと気づく。
 彼女は今、何と言った?
「あの…河南ちゃん……今、何て言ったの…」
「気持ち悪い」
「その前」
「決着を着けてもらわねば」
「ねえわざとやってる?」
 若干青筋を立てて問いかけるが河南は怪訝な顔になっただけだ。素で勿体ぶっているらしい。
「今!言ったよね!?『私が帰る前に』って!」
「ああ」
「何!?河南ちゃん帰る予定あるの!?」
「いや知らん」
「知らん!?!?」
 何だそりゃ。そもそも帰れるかどうかも分からないというのが意味不明だ。彼女には帰る意思がないのだろうか。それとも、帰りたくとも帰れないのか。
「誰だっていつかはいなくなる。何もおかしなことは言っていない」
「いやまあそうなんだけど……そんな急に盛大なフラグ建てられると困るんだけど。というか河南ちゃんってどうやってここに来たの?」
 その辺りのことをきちんと聞いていなかった。改めて真面目に質問すれば彼女はふむ、と頷いて腕を組んだ。いやに真剣な表情だ。机上に両肘をつき、顔の前で手を組んだ。何を考えているのか想像もつかない。
「それは………」
 ごくり、固唾を飲む。
「まあアレ……アレだ」
「アレ」
「そうだ、アレだ」
 アレとは――口を閉ざし、次の言葉を待つ。
「つまりまあ………アレにより来たわけだ」
「………」
「そういうことで待っている」
「……いやだからつまり!?」
 詰め寄ればうざいと額をどつかれた。
「つまりアレだ…源外のジジイにはめられた」
「それ言わなきゃ分かんないよ!てか新しい人出てきた!」
 満遍なくツッコミを入れれば至極面倒そうな顔を向けられた。解せぬ。