火曜日には愛を確かめる


「悟、ちょっとコンビニ行ってくるね」

その言葉通り、すっぴんにキャップ、上着代わりのカーディガンを羽織ってテレビを見ている悟に声を掛けた。いってらっしゃいと快く送り出してくれるものと思っていたら、「僕も行こっかな」とニヤニヤしながらサングラスをつけ始めた。


「珍しいね」
「ん〜欲しいもの思いついたから」
「そうなんだ」

まるで悪戯を思い付いた子供みたいな顔してるから、ちょっと、いや結構嫌な予感がした。そして、悟に対しての私の感は十中八九当たる。まぁ、その悪戯込みで悟が好きなので、もうこれは惚れた弱みってやつなんだと思う。大概のことは目を瞑っちゃうし。

立地条件で選んだマンションだけあって、コンビニは徒歩3分圏内にある。コンビニに着いた途端、籠を持った悟は「これとこれ」と言って大量のお菓子を籠の中に放り込み始めた。わたしは牛乳が欲しかっただけだから、お菓子選びに夢中な悟を他所に牛乳を探しに行くことにした。牛乳とついでに明日の朝のパンを選んでいると、籠を持った悟がやってくる。


「なまえ、これも一緒に買ってきて」
「私より悟のもののほうが多くない?」
「だって僕財布持ってきてないもん」


財布持ってきてない人が買う量じゃないでしょうと突っ込みたくなったけど、これが悪戯なんだと思ったらこの程度で済んで良かったって気持ちのほうが買った。
レジカウンターに持って行って、お会計をお願いする。ぴ、ぴ、と一つずつバーコードを読み込む店員さんが一瞬固まる。籠の一番下に入っていたのはコンドームで、悟が買い物にくっついてきた意味を私はようやく理解した。


「袋わけますか」
「……大丈夫です」

お金を払って、袋を引っ掴んで足早に店を出た。悟は後ろからくっついてくるけど、絶対ニヤついてるだろうし、私のこの反応見て喜んでるだろうな。


「なまえ〜荷物僕が持つよ」
「…悟、あのね」
「あの店員さ、この二人これからセックスするんだなって思ったよね」
「あ〜〜もう」
「まぁ、するんだけどさ」


悟はニコニコしながら、私の手から買い物袋を奪って持つ。もうあの店員さんが居る時間に買い物いけないとか、家出る時からこんな幼稚なこと考えてたのかとか言いたいことはたくさんたっくさんある。でも、「怒った?」ってちょっと不安げに悟が私の顔を覗き込んでくるから、そんな言葉は全部どっかに吹っ飛んでしまう。


「怒ってないよ」

そう言って悟の腕に抱き着いた。二人で歩く道はなんだかやっぱり嬉しいし、終わったことをいつまでも怒ってもしょうがないもんね。シェイクスピアだって、ロミオとジュリエットで「恋が盲目というのなら、暗い夜こそふさわしい」って言ってたしきっと昔からそういうものなんだと思う。悟を嫌いになれない私の負けなんだよ、結局。