土曜日には特別授業を


今日は天気がいいから、と少し遅く起きた朝を取り戻すべく、動き回っていた。洗濯を終え、ベッドカバーも洗濯して、やっと一息と思ってリビングのソファに座る。先客である悟は、冷めたカフェオレを片手に何やら悩んでいる様子だった。


「なにしてるの?」
「新しく入ってくる生徒の制服考えてるよ」
「悟のところはカスタムできるんだっけ?」
「そうそう、動きやすさと利点生かすためにね」
「あ、男の子は学ランなんだね。」
「女子も上着は変わんない」


PCの画面を操作して、女子と男子のスタンダードな制服を表示してくれる悟。今回考えているのは男の子の制服らしくて、「見ててもつまんないよ」と言われるけど、カスタマイズって言葉だけでちょっとおもしろそうって思ってしまう。


「悟はどんな制服にしてたの?」
「僕のは普通だったなぁ。あ、丈が足りなかったから上下ともにオーダーメイドだったけど」
「悟らしいや」


恵はいじると怒るかな〜とかブツブツ呟きながらちゃんと考えてあげてるところが、先生なんだなってほほえましく思えた。そういえばこれ、去年もやってたような気がする。今ほど悟の仕事のことを知らなかったから、なにも聞けなかったなぁ。


「どうせならなまえの先生になりたかったな」
「私の?全然いい子じゃなかったよ?」
「手のかかる子ほど可愛いっていうでしょ?」
「そういうもの?」
「そういうものだよ」


ノートパソコンをパタンと閉じた悟が、サングラスを外してテーブルに置いたあとソファに頭を乗せる。ちょうど、ソファに座っていた私と目があって、へらへらと笑った。悟が先生だったら、もっと勉強がすきになってたかな。それとも逆に勉強に身が入らなかったかな。どちらにしろ、恋をしたことには変わりないだろう。


「悟先生はなに教えてくれるの?」
「エッチなこと以外教えられると思う?」
「ダメだよ、教え子にそんなこと教えたら」
「なまえにしか教えないよ」
「特別授業?」
「マンツーマンでね」
「じゃあ、教えてもらおうかな。エッチなこと」
「喜んで」


私の隣に座りなおした悟に寄りかかる。悟は私の腰に手を回して抱きしめた。いつものように下から見上げると、キスの雨が降り注ぐ。額に鼻先に、唇に。まだ昼間なのにね、って私が言ったら、「昼じゃなきゃ僕たち会えないでしょ?」と教師と生徒設定を遂行している悟が耳に髪を掛けた。それなら私も10代の女子高生になりきって、今日は悟に甘えてしまおう。私だけの特別授業らしいし、ね。