明日がこなければいいと願った日曜日


「悟、明日何時に家出る?」
「明日は朝から打ち合わせあるから7時半には出る」
「りょーかーい」


スマホのアラームをセットしながらなまえが尋ねる。アラームをセットし終わって布団に潜り込むなまえの表情は穏やかだ。なまえが明日は現場に直行だから出勤がゆっくりなのに、起きて見送って欲しいと思ってしまう僕は口を閉ざしてなまえの隣に潜り込む。

なまえを抱きしめて、大好きって心の中で何度も呟く。口に出せるほど大人じゃないからまだ眠るなまえにしか「愛してる」って伝えたことはない。それでも思いは伝わってるって信じてるから。


「なまえの足冷たい」
「悟の足も冷たいよ」
「僕のほうがあったかいって」
「え〜そうかな〜」


ぐりぐりとなまえの頭に自分の額をこすり合わせる。どっちのほうが温かくたってどうでもいいんだ、二人一緒に居れば温かくなるし、冷たくたって二人でいられれば幸せだし。このまま寝ちゃうのがもったいないなぁって思うくらいには幸せだ。


「なまえー」
「なになに?」
「好き、すっごい好き」
「どうしたの急に」
「どうしても言いたくなった」
「変だよ、悟」


くすくすと笑いながらも僕の胸に顔を寄せる。好き、好き、大好き。この思いをどう現わしたらいいんだろう。僕の人生、幸せって思えることは片手で足りてしまうくらいだったけど、なまえに出会ってそれが全部覆されたって思えるよ。なまえが、おいしいってご飯食べてる姿を愛しいと思うし、僕の手で気持ちよくなってくれてる瞬間も幸せだって思えるし、朝に「いってきます」をして夜に「ただいま」って言えることが嬉しいと思える。クソみたいなモノクロの日々が急に色づいて見えたんだよ。


「ずっと僕と一緒に居てね」
「ねぇ、悟やっぱり変だよ」
「え〜変かな」
「ふふ、変だよ」
「なまえのこと好きすぎておかしくなったのかも」
「それなら私はもっとおかしくなってるよ」
「なまえはいつもと変わんないじゃん」


二人きりのベッドの中、セックスするでもなく二人で笑いあう。なまえがなまえでよかった。僕の人生は後悔ばかりだけど、もう一度やり直せるからどこに戻りたい?って聞かれても、なまえと出会わない人生は選べないから、きっとどこにも戻れない。いつまでも、いつまでも、このまま、二人で居られますように。神様に祈ろう。